2013-01-01から1年間の記事一覧

シプリアン・カツァリスの第九

ピアノの魅力は、音色の多様性だ。ホルンの音もコントラバスの音も出すことができる。 ピアノ一台でオーケストラを奏でることができる、というのは本当だ。最も分かりやすい証左はこれだろう。シプリアン・カツァリス ベートーヴェン/リスト編曲:交響曲全集 …

ルンバ、凄い!

なんだかんだで掃除機をかける時間というのはそれなりにかかる。一軒家なら30分、1時間。狭いマンションでも20分とか。 しかも、2,3日掃除機をかけないだけで綿埃が出現する。ハウスダストのアレルギーがないにしても、掃除が健康にかかせないのは分…

シフォンケーキ

シフォンケーキとは難儀な食べ物だ。初めてシフォンケーキなるものを食べたのは、銀座だった。絹のようになめらかで繊細で、「なるほど、確かにこれは“シフォン”ケーキだ」と感動した。 今までに食べたことのある、シフォンケーキを自称するぼそぼそした代物…

南部せんべい

岩手屋、小松製菓の南部せんべいが素朴でありながらえらいこと美味しい。南部せんべいといえば定番は胡麻や落花生だ。丁寧につくってあってしみじみ美味しい。しかしながらその味を知らない人をひきつけたり、土産物や進物に選ばれるには華やかさが足りない…

穏やかな死に医療はいらない

ついに真打登場である。終末期のあり方に、これぞという本があらわれた。これからの日本でかくありたい死のあり方を幾つもの具体例で示してくれている。萬田緑平「穏やかな死に医療はいらない」穏やかな死に医療はいらない (朝日新書)作者: 萬田緑平出版社/…

患者様、お犬様

「患者様」と聞くと、反射的に「お犬様」と心の中でつぶやいてしまう。なんで普通に「患者さん」と呼ばないかな、と思う。正直に言えば私は病院が大嫌いだ。 昔ほどではないにしても、病院で「今、自分は人間扱いされてない」と感じたことのある人は多いと思…

安野百葉子「オチビサン」

安野百葉子氏の描く「オチビサン」は四季折々の木々や花々が丁寧に描かれていて本当に美しい。あまりの美しさに、時としてはっと息をのんでしまったりする。主人公のオチビサンと、近所に住む仲間たちの日常はほのぼのと幸福だ。オチビサンは人間なのかそう…

ある昭和的老夫婦の風景

私が見舞に訪れた時、老人は、死の床にあった。 老人はもうほとんど動くことも出来ない。寝ているようにもみえるが、多分寝てはいないだろう。しかし、達者な頃、あれだけよくしゃべった人が今は一言も発しない。寝たきりの老人の傍らで妻は言った。 「この…

新美南吉「おじいさんのランプ」

新美南吉のベストを一つだけ選ぶとすれば、この「おじいさんのランプ」だ。 小学生の頃、課題図書というやつがあったが、この本は毎年、日本全国民の課題図書にすべし、とすら思う普遍的名作だ。おじいさんのランプ(青空文庫) http://www.aozora.gr.jp/car…

新美南吉「ごんぎつね」

新美南吉 ごん狐 - 青空文庫「ごんぎつね」は小学3年か4年の教科書に掲載されていた。初めて読んだ新美作品である。「ごんがかわいそう」という感想が大方だったが、私はどうも「この作品で最もかわいそうなのは、最後に殺されるごんではなく、ごんを殺し…

かんぽの養老保険に加入するということ

養老保険といえば貯蓄目的の保険の代表格であるが、養老保険は数年前から「どう考えても契約するなんてありえない」商品になり果てている。今や標準利率(予定利率)は1%にまで落ち込んでいる。その結果、ほとんどの保険会社の養老保険は単純に「満期金」…

玉露

とある日本茶専門店で玉露をいただいた。 専門家の淹れる玉露である。玉露の一煎目は「うまみ」のみを抽出する。そのため、ごく少量の、45度のお湯でじっくり淹れる。玉露はさましたお湯で淹れるとはよく聞くが、これほど低い温度のお湯で淹れるとは思わな…

リトビネンコ事件とジャパニーズレストラン

「ロシアからイギリスに亡命していた元KGBのリトビネンコ氏が、ロンドンのジャパニーズレストラン(寿司バー)で放射性物質により殺害された」私はこのニュースを極東の山手線内で見た。「まるで映画かスパイ小説みたいなニュース」としか思えず、現実感…

リトビネンコ事件

2006年のリトビネンコ氏殺害のニュースはちょっと忘れられないほど印象的だった。ニュースの概要はこうである。 「ロシアからイギリスに亡命していた元KGBのリトビネンコ氏が、ロンドンのジャパニーズレストランで放射性物質により毒殺された」こんな…

日本語上演・日本語字幕付の怪

オペラやミュージカルなどの言語付の音楽は、基本的には「はじめに言葉ありき」だと私は思う。言葉の抑揚、文字数、言葉の順序を無視した音楽はどうしたって不自然だ。 しかし、原語を日本語に翻訳して音楽に無理やり当てはめるとどうしてもそうなってしまう…

溝口健二監督「近松物語」

溝口健二監督「近松物語」は確かに名作だ。しかし、何度考えてもちょっと複雑な気持ちになる映画だ。 時は江戸時代。所は京都。若く美しいおさんは、武士同様の格式を持つ裕福な大店の内儀である。主人は商売はやり手だが吝嗇で、若い女中に手を出すような好…

9.11

2001年9月11日の夜、私はたまたまテレビを観ていた。突如として、飛行機が世界貿易センタービル(WTC)の北棟、そして南棟に突っ込み、2つの棟が崩れ落ちる映像をただ茫然と観ていた。あれがイスラム原理主義者による自爆テロだという情報は随分…

かき氷という芸術品

「こんな美味いかき氷、初めて食べた!」という知人の声に誘われて、行ってみたのは日暮里「ひみつ堂」。 確かに。私の記憶にあったジャンクなかき氷とは全く別物だった。削った氷の繊細さ。そして「果物蜜は砂糖以外一切の混ぜ物をせず作る」ことによる果物…

天才映画監督、山中貞雄

天才映画監督、山中貞雄の名前を知ったのは、NHKの名プロデューサーだった吉田直哉氏の著作による。それからずっと山中監督の映画をいつか観たいと思っていた。 東京で「丹下左膳餘話 百萬両の壺」の上映情報を見つけた時には、快哉を叫んだ。 そんな期待…

空襲もまた凄まじい

8月、必ずニュースなどで取り上げられるのは広島であり長崎の原爆だ。 なぜ広島であり長崎なのか。多分、理由は3つだ。・人類史上初の原子力爆弾投下だったから。 ・一瞬の破壊力があまりに劇的だったから。 ・きのこ雲が視覚的に印象的だから。もしも最大…

過ちは繰返しませぬから

広島の原爆死没者慰霊碑には「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」と刻まれている。 私はこの「過ちは 繰り返しませぬから」という言葉が好きだ。 「繰返しませぬから」との言葉は、「過ち」の責任の一端は、碑の前に立つ私たち1人1人が担うこ…

長崎、原爆と朝鮮人労働者

今年(2013年)の長崎平和宣言は印象的だった。さて、かつて訪れた長崎原爆資料館で印象に残ったことのひとつは、被爆者のうちのかなりの割合を朝鮮人が占めていることだった。 長崎の原爆による死亡者は約7万人(長崎市原爆資料保存委員会 昭和25年7月発表…

2013年長崎平和宣言

2013年8月9日の田上 富久市長の長崎平和宣言が素晴らしかった。 久々に格調高く、説得力がある、心を動かす政治家のスピーチを聞いた。 平成25年長崎平和宣言68年前の今日、このまちの上空にアメリカの爆撃機が一発の原子爆弾を投下しました。熱線、爆風、…

ありふれた政治手法としての部落差別

「部落差別なんて、そのうち忘れ去られて無くなるのだから、いわゆる同和教育は必要ない」と考える人は多い。私はそうは思わない。 「部落差別」は2つの点から、「是非とも学ぶべきテーマ」かつ「検証しなければ非常にもったいないテーマ」だと思っている。…

同和教育について

数年前、会社関連で「人権研修」なるものを受講させられた。部落解放同盟の講師が、部落差別の概要や最近の差別意識アンケート結果を一方的にしゃべって終わるという、実に内容の薄い研修であった。 私が驚いたのは、「同和って何?知らない」という20代、…

部落差別というものを初めて怖いと思った

東日本に生まれ育った私は、部落差別を自ら見聞したことはない。 学校に同和教育はあったが、具体的に「あの地域は…」とか「あの人は…」とか聞いた経験はないのだ。いや、あるといえばあるのだが。大体、いまどき「同和」という言葉自体、古すぎだ。 「同和…

被差別部落ならぬ被差別区か

東京都の、とあるところにちょっとしたお屋敷エリアがある。戦前からの由緒ある高級住宅地だ。そしてそのすぐそばには、平和で雰囲気のいい下町商店街がある。 たまたまだが、その高級住宅地と下町商店街は行政区が違う。高級住宅地はA区、下町商店街はB区…

モスコミュールの名店〜BROGLD (ブログルド)

京都に、日本のどんなバーより段違いに美味しいモスコミュールを出すタコ焼屋さんがあった。何しろモスコミュールのためにジンジャービアから作っているのだ。この自家製ジンジャービアがまた絶品。このお店は「縁蛸」という名前で元田中にあった。京都の中…

選挙の作法と楽しみ方

インターネット普及以前の話である。 何の選挙だったかは忘れた。町内には立候補者3名のポスターが貼ってあった。 脂ギッシュな中高年男性達の写真はどれも同じにみえて区別がつかない。 この3択ですか…。投票の判断根拠は、政党名とポスターの顔と選挙公…

オンカロ〜使用済み核燃料をどうするのか

2011年3月以降、電力問題がクローズアップされ続けている。今後の日本のエネルギー政策も原発の再稼働の行方もいまだ五里霧中といったところだ。さて、原子力発電についてである。脱原発にせよ、原発推進にせよ、原子力発電についてどういう意見を持つかにか…