オンカロ〜使用済み核燃料をどうするのか

2011年3月以降、電力問題がクローズアップされ続けている。今後の日本のエネルギー政策も原発の再稼働の行方もいまだ五里霧中といったところだ。

さて、原子力発電についてである。脱原発にせよ、原発推進にせよ、原子力発電についてどういう意見を持つかにかかわらず、すべての人にとって、そこにある絶対的な大問題は「今、既にある使用済み核燃料をどうするのか?」ということだろう。

高レベル放射性廃棄物はすでに発生しているものであり、その処分については今後の原子力政策の如何を問わず、原子力を利用した我々の世代が考えていかなければなりません。
経済産業省 資源エネルギー庁
http://www.enecho.meti.go.jp/rw/hlw/hlw01.html

日本における処分イメージはこんな感じだ。

ステージ1)原子力発電所で使用済み核燃料発生

ステージ2)再処理施設でガラス固化体にする(高レベル放射性廃棄物に。地層処分できる状態になるまで冷却するのに30年くらいかかる)
(注)この再処理の過程は事故リスクなどが大きくコストも非常に高くつくのでやめるべきという意見もあるが、現在のところ日本は再処理する方針だ。

ステージ3)地層処分放射能レベルが安全となるためには10万年くらいかかる)


高レベル放射性廃棄物について、今のところ安定した地層に地下深く埋めて「隔離」することが一番安全な処理とされている。
どのくらいの深さに埋めるのかといえば300メートル程度だという。

さて、地層処理は安定した地層で行うというが、北海道から沖縄までプレートの重なりの上に位置する日本に地震と無縁の安定した地層などあるのだろうか。

わが国の火山の多くは限られた範囲に分布しており、約200万年前からほとんど活動地域に変化がありません。また、断層活動も過去数10万年にわたり同じ活断層帯でくり返し起こっています。したがって、これらの活動地域を避けることにより火山や活断層の影響を受けにくい安定した地層を選ぶことが大切です。なお、地下深くでは、地表に比べて地震による揺れの影響が小さいので、処分施設の設計によって対処可能と考えられています。
経済産業省 資源エネルギー庁
http://www.enecho.meti.go.jp/rw/hlw/hlw03.html

ほんまかいな。

日本ではまだ地層処分の地は決まっていない。

★★★

この地層処分を行う場所を決めて、施設の建設まで行っているのがフィンランドだ。その施設は「オンカロ」と呼ばれる。

オンカロについての会議の様子は面白い。

「この施設(オンカロ)は危険だから決して侵入してはならぬ」ということをどうすれば後世の人に確実に伝えられるのか。10万年後ではフィンランドという国自体、存在しないことも普通に考えられる。行政の継続性は期待できない。
看板などを立てて伝えるか。しかし言葉も変化するし、フィンランド語も英語も確実に解読されるとは限らない。では絵か?

そんなことを大真面目に議論している。

10万年という時間感覚はあまりに壮大すぎて現実感が持てない。
10万年。人間的にはそれは永久というのではないか。

オンカロフィンランド国内で発生した放射性廃棄物を地層処理するために建設されている。

「自国で発生した廃棄物は自国で処理を」という考え方はもっともなのだが、核廃棄物の場合は以下の弊害があるように思う。

・「オンカロ」が世界各地にできてしまうことで、どこにその危険な施設があるのか忘れ去らずに把握し続けるのは困難になる。数十年ならまだしも、何しろ10万年である。

・安定した地層(かつ人口密度の低い地)の確保が困難(というか無理)な国がある。確保が困難な国の筆頭は明らかに日本だが、多分、日本だけではないだろう。

核の廃棄物については、その危険性から、各国がそれぞれ自国処理を行うのは最適な処理ではないと思う。
地層が安定していて広範囲に渡って人口密度が低い土地。というのは世界でも限られているだろう。
「世界中の使用済み核燃料を集積して地層処理を行う地」が必要なのではないか。

「使用済み核燃料の処理、引き受けます」というビジネスもありうるだろう。例えばロシアなどがそういう提案が出来る。

<参考>
マイケル・マドセン監督「100,000年後の安全

100,000年後の安全 [DVD]

100,000年後の安全 [DVD]

放射性廃棄物のホームページ(経済産業省 資源エネルギー庁
http://www.enecho.meti.go.jp/rw/index.html