供給者目線と消費者目線でみる映画料金
昔、映画産業に働く人にうっかり「映画1800円は高いと思ってしまう」と言ってしまったことがある。
すぐさま反論された。
かの人曰く、映画1800円は激安だそうだ。
供給者側視点としては、製作費や映画館建設費、運営費などなどを積み上げると「あれだけコストがかかっているものが1800円で観られるのは激安!」ということになるらしい。
対するこちらは消費者視点だ。
空いた時間をどう過ごそうかと思った場合、映画は数ある選択肢の一つでしかない。
映画 通常料金 1800円(サービ
スデーなど1000円)
文庫本 1冊 500円〜800円
新書 1冊 700円〜900円
コミック 1冊 400円〜600円
ゲームソフト (寡聞にして知らず)
映画を観るにしても、昔の名作映画DVDを家で観るという選択もある。
昔の名作映画DVD 500円
で、私としては「映画1800円はちと高い。1000円なら、まぁ」と思ってしまうのだ。
足を運んだ映画が超駄作で大外れというリスクもあるわけで。
★★★
映画が娯楽の花形だった時代は確かにあった。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督「ニュー・シネマ・パラダイス」(私としては断然、初公開版がお奨めだ)など、そんな映画全盛期時代の熱気や映画への愛に溢れた不朽の名作だ。
ニュー・シネマ・パラダイス SUPER HI-BIT EDITION [DVD]
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しかし映画を上映するだけで人々が熱狂して非日常空間が生まれる、そんな時代はもう過ぎ去った。
テレビが家庭に普及し、娯楽は多様化した。
21世紀において、わざわざ映画館に足を運んで映画を観るという選択をさせるには、ただ映画を上映するだけではだめなのだろう。トータルで非日常を創り出し、引きずり込む「しかけ」が必要なのだ。
多分、映画産業にかかわる人が、比較したり意識すべきなのは、本やゲームソフトではなく、徹底した非日常を売り物にしたディズニーランドのような施設やイベントだろう。
東京ディズニーランド 1日パスポート 大人6200円(2012年3月現在)
鼠の園を侮るなかれ。実際に行ってみて、1日中その創りあげられた空間に驚嘆しっぱなしであった。行く前には高いと思った6200円を、帰りにはむしろ激安とすら思ってしまった。
かつて「映画1800円は高いと思う」と言ってしまったときの、映画人であるかの人の言葉はこうだった。
「あなたは映画を愛していませんね。もっと映画を愛してください」
それを言っちゃあ、おしまいよ。
愛は強制はおろか要請もできません。