口永良部島の噴火と撤退

2015年5月29日、口永良部島が噴火した。ついに噴火警戒レベル5となり全島避難である。

昨年8月にも噴火して、噴火警戒レベルが3に設定されていたので、驚きはない。

1人、けがをされた方がいるようだが、ともかくも全員無事避難できたのは事前準備と幸運の賜物だろう。

しかし、である。

・「大きな噴火があるかも」「あっても全然おかしくない」とは思っていても、やはり噴火は突然。「いきなりの全島避難」には変わりない。どれだけの大事なものを持ち出せたのか。多分、ほとんど持ち出せなかったのではないか。

・今回、全員無事だったのはたまたまの幸運なのではないか。高温の火砕流が居住区を襲う可能性もあったのではないか。

そしてこれから、噴火活動がいつおさまるのか分からない。

で、強く思うのだが、

・そもそも口永良部島、噴火活動活発すぎ。人が住むべき島ではないだろう。
気象庁口永良部島 有史以降の火山活動」
http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/fukuoka/509_Kuchierabujima/509_history.html

現在、口永良部島の人口は、たった137人(2014年10月末現在)。
さしたる産業もない。

そして島の隔絶ぶりが凄まじい。

アクセスは屋久島からのフェリーが唯一の手段。それも1日1便。屋久島から片道1時間半、2等で2,100円もかかる。往復で4,200円。

http://kerabu.eco.coocan.jp/access.html

この島に住んでいたら、屋久島ですら滅多に行かないかもしれない。

民宿が8つほどあるようだが、交通費とフェリーが欠航するリスクに見合う魅力がこの島にあるのか。正直、否、だと思う。観光地として成立するにはかなり厳しい。飲食店すら1つもないのだ。

この100人ほどの島で、島民が現代日本における「健康で文化的な最低限度の生活」を実現するためには、どれだけお金がかかっているのだろう。

・外部とのアクセス確保
口永良部島唯一の外部交通手段である屋久島との間を結ぶフェリーは町営。口永良部島無人となればこの町営フェリーは不要になるだろう。
町は年間3億5千万円ほどを船舶事業に支出している。100人程のために3億円。なんという贅沢。
屋久島ー口永良部島間の乗客数は年間何人なのだろう。

・電気、ガス、上水道、電話といったライフライン
殊に「基本、海を超えて送電できない」から、島の電気は高コストなはずだ。

医療機関、金融機関、郵便局
商圏100人程度では明らかにペイしない。

・学校
2015年現在、島の小中学生は16名。いくらなんでも少数過ぎ。この人数では、少なくとも「多様性」を学ぶのは困難だろう。また、できる球技なども限られるだろう。
で、この16名のために一体、何人の教員、職員が配置されているのか。1人あたり教員数は全国有数の高さだろう。

・道路の整備
道路は保全も必要だ。例えば10年のスパンで一体いくらかかっているのだろう。


この噴火を機に、口永良部島は居住禁止区域とし「全島移住」すべきではないだろうか。

全島移住とすると、こんな対応が必要になるだろうか。

・島の私有地は国が買い取ればよかろう。国が買い取るとすれば直近の地価公示に基づく補償が妥当だろうか。

・住宅には、恐らくばっちり地震保険をかけているだろうから問題なかろう。全壊扱いで保険金を支払えばよい。

・恐らく屋久島に移住したい人が多いだろう。特に年金生活の老人。今からコミュニティが失われると健康面にも大きな影響が出る。屋久島に口永良部島出身者がある程度まとまって住める場所を用意できるだろうか。

・新しい事業を始める島民に対し、資金の低利貸し付けなどを県などが行うか。

すっぱり早めに移住の方向で動いた方が島民にとっても無理がないし、社会的にも負担が少ない。

「噴火リスクを背負い、多額の税金を注入して、一体、何のために口永良部島への居住を認めているのか」。