浅草寺仲見世の既得権益

小商いでもっとも重いコストは地代家賃の負担だろう。
東京は地代家賃が高い。いわんや常に大賑わいの浅草仲見世をや。

と思っていたら、全然違った。

浅草仲見世は、全部で89店舗が連なる東京を代表する観光地だ。平日でも多くの観光客で賑わう商売人垂涎の地だ。
その仲見世のお家賃、なんと10㎡あたり月1万5,000円。
家賃の平均は2万3,000円だそうな。

絶句するしかない。なんでやねん。

仲見世の建物を所有していたのは東京都だったという。
え。東京都。浅草寺ではなかったのか。
なお、土地は浅草寺が東京都に無償提供。そして浅草寺は土地の固定資産税を支払っていなかったと。

歴史的な経緯はあるにしても、明らかに不適切。
浅草寺は固定資産税を払うべきだ。そして、あの仲見世の建物には東京都が保有、管理するような公益性はない。
支払われるべき固定資産税が支払われず東京都(ひいては都民)は不利益を被っているといえる。

あの浅草寺仲見世の家賃が10㎡あたり月1万5,000円とは、既得権益そのものである。

で、ようようやっとこの状況が適正化されることになった。

2017年7月、東京都が浅草寺に2000万円で売却することで合意された。
うん。浅草寺が土地建物を所有して、ちゃんと固定資産税払うのが正常なあり方だ。

浅草寺は、これから土地、建物の固定資産税も支払わなければならないし、建物のメンテナンスもしなければならない。もちろん家賃の徴収もせねばならぬことだ。
当たり前であるが、浅草寺は家賃の値上げを提案する。

浅草寺、家賃を10㎡あたり25万円に値上げを提案。

妥当。妥当すぎる。

しかし浅草仲見世振興組合広報部長はいう。
 「周辺の家賃相場からすると、妥当な金額とされたが、売り上げは限られており、このままでは経営が難しくなる店も出てくる」。
「シャッターを閉める店が増えれば、今の浅草の風景が失われてしまうかもしれない」
(2017年10月28日産経ニュース)

いやいやいや。
経営が成り立たないなら撤退すればいいがな。仲見世に出店したい事業者はいくらでもいる。

今の仲見世にはイケてない店が多すぎる。

悪い意味で昭和風味の土産物屋が多い。「誰が買うんだこんなもの」である。
ペラッペラで粗悪な「キモノ」を売る店とか、いくらなんでも外国人観光客をバカにしすぎだろう。1950年代じゃあるまいし。今の目の肥えた観光客なら買わないのではないか。

また、「三味線付属品と象牙細工の店」とか微妙すぎる。「ニーズないだろ」、「象牙はちょっと問題あるんじゃないか。例え合法だとしても」とか色々頭をよぎる。

浅草仲見世、家賃に甘えて時代に取り残されている店が多過ぎなのだ。

大家が浅草寺となったのを機に、退場すべき店は退場していただいて、ちゃんと収益を確保できるもっと魅力的な店が出店すればいい。
なお、貸し手である浅草寺が「浅草らしさ」や「独自性」を店舗募集の条件にして、きちんとセレクトすれば「どこにでもあるチェーン店だらけになる」なんて杞憂に過ぎない。

大体、例え大手であっても限定ショップ的な提案をしてくる可能性もある。

例えばユニクロなどが有名(または何らかのストーリー性のある)デザイナーとコラボして浅草寺仲見世限定商品を扱う店を出すとか、ありそうな話だしおもしろそうだと思う。

あと、前から思っていたのだが、浅草を代表する名店が仲見世に出店してないのは残念だ。せっかく浅草に来たのなら、とりあえず「亀十」のどら焼きと「犬印鞄」は外せないだろう。でも、ちょっと店に足を運ぶのが面倒なのだ。仲見世に店があったらいいのに。
これまでの既得権益が一掃されたら、これらの店が出店する可能性もあるんじゃなかろうか。


仲見世商店街、2017年にしてやっと既得権益を整理して昭和を脱出するらしい。

浅草仲見世商店街ホームページ
http://www.asakusa-nakamise.jp/

【参考】
2017年10月28日「家賃引き上げ16倍?! 東京・浅草寺仲見世商店街に迫る“危機”」産経ニュース
http://www.sankei.com/premium/news/171028/prm1710280019-n1.html