明治大学クライス事件
2014年6月20日、新宿の元コマ劇場前で異様な光景が人目をひいた。
女子学生10名以上が昏倒。
<6月20日の事件概要>
・写真で見る限り、倒れているのはすべて女子学生
・明治大学と日本女子大学の公認テニスサークル、クライスの起こした騒動
・1年女子学生と2,3,4年の男子学生の飲み会だった(←この構成を聞いた時点でアウト感が漂う)
・目撃者により警察が呼ばれるが「事件性なし」とされる。
早稲田スーパーフリー事件(2003年発覚)を連想せざるをえない。
普通に居酒屋で出てくる酒だけで10名以上が昏倒状態になるとは思えない。
スーフリ事件で使われたスピリタスのような強烈な酒を使ったか、なんらかの薬を盛ったのではないか。
あの昏倒写真をみたら、それはもう確信だ。
大学1年ということは未成年。未成年者を(しかも圧倒的に有利な立場に立つ先輩が、新入生を取り囲む形で)昏倒させるまで飲ませたら完全に強要罪、傷害罪だ。もちろん、未成年者飲酒禁止法にも抵触している。
事件性は誰の目にも明らかだ。警察が「事件性なし」と判断してしまったのは本当にまずい。
スーフリ事件をふりかえろう。
2003年に発覚した組織的な輪姦事件。早稲田大学の元公認のサークル「スーパーフリー」のメンバーである大学生らは「ギャルは撃つための公共物だぜ」を合言葉に1999年秋から常習的に女子大生への輪姦をおこなっていたが、そのうち2001年12月19日の事件と2003年4月27日の事件と同年5月18日の事件のみが起訴され、早大生ら14人が準強姦罪で実刑判決を受けた。
(出典:ウィキベディア「スーパーフリー事件」)
スーパーフリーはまごうことなき犯罪集団だった。
被害者は400人を超えるとも言われる。正確なところは分からない。「主犯が手帳に犯行日や被害者数をメモしていてその手帳を押収した」といったことでもなかったら分かりようもない。仮にそうしたものがあったとしても主犯以外のスーフリメンバーでの犯行も当然あるだろうし、事件数のカウントは困難だ。
1999年〜2003年の4年間も犯罪行為を繰り返していたのだ。被害者は100人は軽く超えているだろう。
しかし起訴は3件のみ。
性犯罪は暗数が大きいといわれるが、それにしても闇に埋もれ過ぎだろう。
強姦罪・準強姦罪の起訴はことほどさように行われにくいのだ。
そして、こうした犯罪行為を行っていたのはスーフリだけではないし、スーフリ後も同種の事件は起きている。
私自身、早稲田でも明治でもない大学のキャンパス内でスーフリの香りのする台詞を耳にしたこともある。
スーフリ後、高田馬場で同じような女子大生集団昏倒現場を目撃したことがあるという証言もある。
<提案>
街中で、どうみてもヤバそうな集団昏倒現場をみたら警察を呼ぼう。
参加した飲み会で何人も昏倒する、みたいなヤバい情景が広がったらすかさず警察を呼ぼう。
どうせこの時点で傷害罪などの犯罪成立だ。
この先の性犯罪はきつい。強姦罪(準強姦罪)は親告罪だし被害者の負担も大きい。
親告罪ではない集団強姦罪、集団強姦致死傷罪というのもあるが、色々な意味で更にきつい。大体、こうした犯罪を防げるなら防ぐに越したことはない。
すなわち、昏倒時点できっちり「事件」にしなければ。
★★★
昔、大学入学したばかりのころ、同級生(男)がこんなことを言っていたのを思い出す。
「父が、『酒に呑まれるような飲み方は、知識階層の飲み方ではない』って言ってた」
「なるほど」と思ったものだ。
この台詞、東大や早慶などのいわゆる名門校ならば、それなりに破壊力が高いだろう。
更にもう一つ。
「『セルフコントロールがきかなくなるような飲み方は尊敬されない、というか周囲に呆れられる』って父が言ってた」。
女子学生は(男子学生でもいいが)、これらの台詞を是非イノセントな感じで言い放ってみよう。
大体、これ、正論だし。正論が許容されない団体などに用はない。
★★★
それにしても、今回のダメ対応その2は明治大学と日本女子大学である。
こんなサークル、公認してたらまずいだろう。ちゃんと事実関係を調査して、場合によっては解散させなければならない。
また、日本女子大学の1年生は被害者側である。日本女子大学は「あなたは犯罪行為(未成年者にもかかわらず昏倒するまで飲酒させられた(または一服盛られた)=傷害罪)の被害者です」ときちんと教え、被害者を守るべきである。
彼女らはネット上に「素面なら、普通こんな恰好、恥ずかしくて出来ないよね」という姿態を晒したわけだが、そのことも含めて彼女らは被害者だ。
(あの写真の拡散については、個人特定はされないし、事件の周知という公共の利益の方が勝るため「拡散されてよかった」と思う)
「日本女子大の学生は(現場に)いなかった」などと口裏をあわせようとしたクライスの隠蔽工作は悪質で許しがたい。
また、明治大学が加害者を放置するのであれば、それは許されることではない。
こういう犯罪行為を行っているサークルは、他大学にもあるだろう。しかし、こういう犯罪行為を積極的に容認するような大学は「高リスク大学」と判断せざるをえない。
私は事件の隠蔽や中身を伴わないおざなりな謝罪は、犯罪行為の積極的な容認とみなす。
もし私が企業の人事担当者なら、高リスク大学の卒業生など採用しない。採用後、社内や取引先で犯罪行為を行われてはたまらない。勿論、そうした犯罪行為が発覚したら大スキャンダルである。そんな大きなリスク、会社としてとれない。
大体、社員の不祥事があって「犯人は明治大学出身」となったとき「(高リスク大学である)明治の学生を採用してたなんて、人事はなに考えてるんだ」と非難されるリスクを人事担当者はとりたくないだろう。
明治大学がこの事件に対して誠意ある毅然とした対応と、今後の再発防止体制について発表しなければ、企業にとって、明治大学の学生を採用しないことが正しいリスク管理となる。
また、もし私が親なら、子どもの高リスク大学への進学は許可しない。子どもがうっかり「そういうサークル」に入ったり「そういう人」と友達になったりして、犯罪行為に加わったり、モラルが毀損した人間になったら取り返しがつかない。
明治大学は教育をなす主体として、事実の調査と関係者への適切な処分をすべきだ。
もう一度、スーフリ事件に戻る。
輪姦を活発に始めるきっかけとなったのは、第56回公判における主犯の証言によると、もともと明治大学のイベントサークルで輪姦が活発におこなわれていたところ、このサークルとスーパーフリーを掛け持ちしているスタッフ(未逮捕者)から「スーフリでもマワしをやりましょうよ」と提案されたことであったという。
(出典:ウィキベディア「スーパーフリー事件」)
明治大学にも多くの加害者と被害者がいたと推察される。
スーフリ事件を受けて明治大学はどのような対処をし、犯罪防止の体制構築をしたのだろうか。
例えば、輪姦が活発に行われていると裁判で証言された「サイドキックス」なる問題サークルについて、どのような調査と対応を行ったのか。明治大学はそのあたり、情報開示しているだろうか。
現在、明治大学も日本女子大学も、学生からの相談受付とか、クレーム窓口などの体制はどうなっているのだろうか。また、今まで学生からの「告発」について適切に対応しているのだろうか。
犯罪防止、被害者保護、そして危機管理の体制がどうなっているのか、是非知りたいところだ。
<関連記事>
2014年6月30日「被害者を責めることの罪深さ」