Kindleで読む関東大震災の記録

1923(大正12)年9月1日に起きた関東大震災の社会的インパクトは本当に大きかった。
関東大震災」といえば、まずは吉村昭のその名もずばりの名著「関東大震災」だろう。

吉村昭関東大震災」(1973(昭和48)年)

関東大震災 (文春文庫)

関東大震災 (文春文庫)

丹念に取材された名作だ。
地震発生直前(群発地震地震研究の状況)ー地震発生(地震の被害状況。ことに火災の被害は壮絶)−直後の人災(流言の流布。自警団などによる虐殺事件)−復興(死体処理、バラック街、犯罪の多発)と時系列に構成されているのも読みやすい。
吉村氏はあとがきで次のように語っている。

私の両親は、東京で関東大震災に遭い、幼時から両親の体験談になじんだ。殊に私は、両親の口からもれる人心の混乱に戦慄した。そうした災害時の人間に対する恐怖感が私に筆をとらせた最大の動機である。

東京人必読の一冊だ。

★★★

さて、まさに震災の時を生きていた人々も生々しい体験記録を残している。


寺田寅彦「震災日記より」

これは本当に寺田寅彦氏個人の日記。震災の起こる前8月25日から、9月1日上野での罹災体験、9月2日本郷周辺が火事で焼けつくされた様子、9月3日食料品が欠乏してゆく状況も描写。

朝鮮人についてのデマについても記載がある。

(親戚のものが)昨夜上野公園で露宿していたら巡査が来て○○人の放火者が徘徊するから注意しろと云ったそうだ。井戸に毒を入れるとか、爆弾を投げるとかさまざまな浮説が聞こえて来る。こんな場末の町へまでも荒して歩くためには一体何千キロの毒薬、何万キロの爆弾が入るであろうか、そういう目の子勘定だけからでも自分にはその話は信ぜられなかった。
(9月2日の日記)

科学者の面目躍如たる記述。

宮本百合子「私の覚え書」

宮本百合子「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」「私の覚え書」の方が読みやすい。
宮本氏は9月1日当時は福井にいた。9月4日から5日にかけて東京に戻っている。自分の体験と周囲の人の被災体験を聞いて記している。

鈴木三重吉「大震火災記」(初出1923(大正12)年11月)

とにかく火事!火事の被害が大きい、というのが印象的。

芥川龍之介「大正十二年九月一日の大震に際して」

ぶっちゃけ駄文。


★★★

・今村明恒「地震の話」(1930年発行)

地震の話

地震の話

明治から昭和にかけての最も高名な地震学者、今村明恒氏の著書。

※この記事は資料を見つけ次第、随時更新予定。