津波16.7m

東日本大震災から6年が過ぎた。
今年、ヤフーのこの広告が絶賛された。


3月11日、この日が来るたび、私たちはあのときのことを振りかえる。
東日本大震災から、早くも6年が経った。
災害なんて、もう起きるな。毎年のように私たちはそう思うけど、災害はいつかまた、たぶん、いや、確実に起きてしまうだろう。

あの日、岩手県大船渡市で観測された津波は、最高16.7m。
もしも、ここ銀座の真ん中に来ていたら、ちょうどこの高さ。

想像よりも、ずっと高いと感じたはず。
でも、この高さを知っているだけで、とれる行動は変わる。そう、私たちは、今、備えることができる。

被災した人たちの記憶に想像力をもらい、知恵を蓄えることができる。
あの日を忘れない。それが、一番の防災。ヤフーはそう思います。

「あの日を忘れない」とYahooは言うが、日本という単位でみれば、いつか忘れる。どうしても風化する。

例えば長野県や岐阜県津波リスクはない(はず)。銀座に16mもの津波が来ることもないだろう。
日本には、津波リスクのない地域に住む人々の方が多い。身の回りにないリスクについては、別に忘れて構わないだろう。

でも、津波リスクのある地域では、Yahooの言う通り、忘れてはいけない。
もちろん「地震があったらすぐ高い所へ」という認識はとても大切だ。
ただ、地震が起こって津波が来そうになってから津波を思い出しても遅いかもしれない。

なぜならば。

地震があっても津波は来るかもしれないし来ないかもしれない。
津波地震の何分後に来るか分からない。5分後かもしれないし、30分後かもしれない。
・結局、どのくらいの浸水高の津波がくるか分からない。

実際、東日本大震災では、「2階建の建物では危ないかも」と思って、高台や、より高い建物などへの避難途中に津波にのまれた人もいた。結果として「避難しなければ助かったのに」というケースもある。

また、周囲に2階建て以上の建物がない地域にいて、10mを超える津波にのまれた人もいた。
あと、鮮烈に覚えているのは、ゆっくりとしか歩けない高齢者が、避難途中に津波にのまれた映像だ。
あの老人のように、迅速な避難ができず避難途中で津波にのまれた人も、そもそも歩くのが困難で、家の2階にとどまるしか選択肢がなく津波にのまれた人もいる。

なので、津波リスクのある地域に生活する人々は、「地震があったら」ではなく、平時から「ここは津波リスクがある地域だ」ということを忘れないことこそが本当に重要だと思う。

で、私が思う「重要な津波への備え」はこうだ。

1.津波浸水予想地域に住居の建築許可を出さない(極力、事務所等に限る)。
自宅からの避難は困難だ。寒い夜に地震が来たら、避難しない人は多いだろう。来ないかもしれない津波のために、寒い思いをするのはなかなか辛い。また、高齢者や幼児など、素早い避難が困難な人もいる。

2.津波浸水予想地域には「津波避難ビル」の表示を掲げたビルを建てる。
津波リスクのあるときは、このビルに逃げ込んでいい、逃げ込むべきということを明示しておくことは重要。
明示してないと、他社のビルになかなか飛び込めない。

3.津波リスクのある地域には「津波浸水想定区域」の大きな看板表示が必要。
ビジュアルに認識できるよう、看板などで大きく表示していないと津波リスクを忘れてしまう。
また、旅行者や転入者は、看板で表示してないと、そこが津波リスクのある地域だと知りえない。
普通、旅行先や転居先で、わざわざ津波リスクについて調べたりしない。

例えば大阪は津波リスクが極めて高いが、そんなことを知ってる旅行者は少ないだろう。また、大阪は転勤族も多い地域だが、彼らも知らない可能性が高い。「大阪で地震があったらすぐ高いところへ」というのはどのくらい「常識」なのか知りたいところだ。大阪で街頭調査をしたらどんな結果が出るだろうか。

Yahooのこの広告、大阪でもやるといいのに。