さくら野百貨店仙台店、倒産

さくら野百貨店仙台店は、実はひそかに注目していたデパートだった。

仙台駅といえば、まず、エスパル仙台が駅回りの動線を整え、美味しい店や使いやすい店がエキナカにそろえられていて、「駅周りだけでもかなり満足できる」環境になっている。

そして、パルコが若者を集客し、ロフトもあり、「仙台、さすが東北の中心都市だ」と思う賑わいがある。

で、その駅近く、というか、駅ド真ん前という超恵まれた立地にある死に体の老舗デパート。
それがさくら野百貨店だった。

2011年の東日本大震災では、さくら野デパートの外壁が道路に崩落したのが印象的だった。たまたま落下地点に歩行者がいなかったのが幸いだった。運が悪ければ死傷者が出たはずだ。

あのあと、さくら野デパートをみる度に「事業終了するなら今じゃね?今なら東日本大震災の影響って言い訳が使えるし。絶対、実際の倒産理由、違うけどな」
義援金とか、さくら野デパートにも分配されるの、なんか業腹」「潰れるべきは潰れればいいのに」
そう思いながら、なまあたたかく見守ってきた。

地元老舗企業だけに、東日本大震災の、いわゆる復興特需で寿命が延びたのかもしれない。

さくら野百貨店仙台店の沿革をみてみよう。

1946年 営業開始(当時の名称は丸光)
1991年 店名を仙台ビブレに変更
2001年 民事再生手続き開始
2002年 社名をさくら野百貨店に変更、再オープン
2010年 ブックオフ入居
2006年2月期 売上193億2600万円
2016年2月期 売上79億3900万円
2016年 さくら野百貨店仙台店創業70周年

創業70年の老舗地元百貨店。

終わりは唐突だった。

2016年2月27日、仙台地裁に自己破産を申請。破産手続き開始。

破綻の日の概要をみてみる。

・負債総額約31億円。従業員約120人解雇。
ブックオフドコモショップなどの賃貸借店舗は当面、営業を継続。
・青森、弘前、八戸、北上にあるさくら野百貨店は、別会社の経営なので影響なし。今回自己破産したのは仙台店のみを経営するエマルシェ。

従業員は「ある朝出勤したら倒産してた。突然の即日解雇」だったようだ。
市民からみても取引先からみても「いきなり倒産」。

さくら野百貨店のホームページをみれば、破産の翌日になっても「採用情報」のページがそのままだし(2014年から更新してないようだけど)。

店の周辺には「さくら野のホワイトデー」とか書かれたポスターがひらひらしてるし。

「いつか破綻するだろう」と思っていても、まさか、こんないきなり破綻とは。
閉店セールもなく。閉店セレモニーもなく。

さくら野百貨店の跡地は、間違いなく一等地だ。

さて、あのチープで古びた建物は取り壊されるのか。
そして今後、跡地はどう活用されるのか。いよいよ興味深い。

【参考】
2017年2月27日帝国データバンク 倒産速報記事「株式会社エマルシェ」
http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4270.html
2017年2月27日河北新報「<さくら野百貨店仙台>自己破産 負債31億円」
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201702/20170227_12036.html