リュック・ジャケ監督「皇帝ペンギン」

リュック・ジャケ監督「皇帝ペンギン

いつまでも印象に残る、忘れ難い映画だ。

皇帝ペンギンの1年間に密着したドキュメンタリー」。
ドキュメンタリーものは好きなジャンルだ。うん。ここまでの情報なら、すごく観たい。

でも、なんと「ペンギンに擬人化アテレコ付」。
うっわ。絶対観ない。

ペンギンの絵に勝手な擬人化ポエムをつけて「作品」にするのはよくある。
あれ、反吐が出るほど嫌いだ。
忌憚なく感想を言えば、
「奴ら(ペンギン)は奴らの世界で生きている。勝手に擬人化して矮小化するな。不愉快だ」である。

この映画、「絶対観ない」と思っていたのに、なぜ観たのか、覚えていない。

とにかく、本来、私の嫌いな映画、ど真ん中なはずなのに「やられた」。完全にノックアウトである。

まず、厳しい自然の映像美が素晴らしい。
で、擬人化ナレーションのフランス語の響きが美しく官能的。
そして皇帝ペンギンの映像自体も明らかに官能的。

これは恋愛至上主義国フランスの面目躍如たる一本だ。脱帽せざるをえない。

「彼ら、きっと、路傍の石でも官能的にとれるぞ。“めっちゃエロティックな石の映画”とかオーダーがあってもつくれる。確実に」

鑑賞の注意点はただひとつ。これは絶対フランス語で観るべし。多分、日本語吹き替えで観てたら、私は途中退場しただろう。

絶対吹き替えしてはいけない映画の一つだと思う。