預貯金の金利と保険の予定利率は全く別

先日、とある保険の仰天営業トークを聞いた。

仰天トークその1

この超低金利時代に、1.xx%の予定利率で運用しています。

いや、予定利率1.xx%=超低金利ですから。
予定利率の推移を確認してみよう。

生命保険各社の標準的な予定利率の推移(3利源配当タイプ)

1952年3月〜4.0%
1976年3月〜5.0%
1985年4月〜5.5%
1993年4月〜4.75%
1994年4月〜3.75%
1996年4月〜2.75%
1999年4月〜2.0%
2001年4月〜1.5%
*1976年〜1993年は保険期間20年超の場合
(出典:生命保険文化センター「なるほど知っ得!生命保険Q&A(2008年4月改正版)」)

仰天トークその2

銀行定期預金に比べて超お得(銀行定期預金10年ものの一例 年利0.3%)。

いや、預貯金の金利と保険の予定利率を並列に比べるのは全く不適切ですから。
例えば、手元に100万円あるとする。
100万円を預貯金する場合(金利0.03%)と100万円を保険料として保険契約する場合(予定利率1.4%)の超簡単な比較イメージ図。

つまり、預貯金は預け入れ額(100万円)に対して×○%(金利)となるが、保険は払込保険料全額(100万円)に対して×○%(予定利率)となるわけではない。

予定利率とは某社終身保険のパンフレットによればこういうことだ。

予定利率とは、将来の資産運用による収益をあらかじめ見込んで割り引く際に用いる利率のことをいいます。なお、この保険に適用される予定利率といわゆる利回りとは異なります。

だから預貯金には元本割れの期間はないが保険にはある。というか最近の養老保険など最後まで元本割れのこともある。
保険料を算出する際の要素の一つである予定利率がいくら高くても、図でいうX万円(経費等)の部分が大きければ貯蓄性は低い。保険はこのX万円(経費等)がいくらなのか開示していない場合が多い。よって保険契約にあたって確認すべきは払込保険料累計と解約返戻金の推移表ということになる。というか「払込保険料累計と解約返戻金の推移表」はしっかり確認する必要があるが「予定利率」は確認しなくても問題ないだろう(なにしろX万円(経費等)がいくらなのか分からないのだから)。
むしろ予定利率と預貯金の金利の違いが伝わらず、契約者が誤解する可能性があるから予定利率は契約者から聞かれなければ言わないというのが真っ当な保険会社ではないかと私は思う。
ちなみに例えば業界の雄、日本生命終身保険を契約するにあたって予定利率については特に説明はなかった。こちらが「この保険の予定利率は何%ですか」と質問したら「1.4%です」と即座に回答されたが。

それにひきかえ、この預貯金の金利と保険の予定利率を同等とみなして比較する営業トーク、故意にやっているなら相当に悪意的、分かってなくてやっているのなら相当に不勉強。
悪意的か不勉強か、いずれにせよ論外にも程がある。

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