日本生命の劣後債発行

2012年10月、日本生命が20億米ドル(約1600億円)の劣後債を発行した。
http://www.nissay.co.jp/news/2012/pdf/20121012.pdf#search='%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%94%9F%E5%91%BD+%E5%8A%A3%E5%BE%8C%E5%82%B5'

利率年5%の劣後債である。
今どき、日本生命に限らずどんな機関でも年5%の運用益などまず見込めないわけで、普通に考えれば、劣後債など発行したくない代物だろう。

それでも出さざるを得ないというのは、余程、目先のキャッシュフローに余裕がなかったことが窺える。

生命保険会社は長期契約を扱うので、運用も自然と長期もの中心になる。
長期ものは機動性には欠ける。途中解約すると損失を被る。

日本生命としては、保有する長期ものの解約よりは年5%の劣後債発行の方が損失が少ないと判断したのだろうか。
それにしても1600億円もの劣後債を発行するくらいなら、責任準備金の積み増しや配当を低く抑えて劣後債の発行額を抑制する方が長期的にはベターな気がしてしまうのだが、保険業法によりそうそう自由にはできないか。

ちなみに、例えば「どこどこの生命保険会社が危ない」という風評により、その保険会社に解約が殺到したりすると、その保険会社は予定外のフローを準備しなければならないため劇的に財務状況が悪化する、という絵に書いたような負のスパイラルに嵌ることとなる。

私は現時点で日本生命が危ないとは思わない。
しかしあの日本生命劣後債発行とは。結構、私としては衝撃的だ。

「保険金支払いが増えたから」「解約が増えたから」ではなく「資産運用収益がちょっと」→「劣後債発行」という流れのようで、ちょっと頂けない感もある。

日本生命の現状 2012」
http://www.nissay.co.jp/kaisha/annai/gyoseki/pdf/2012/disc2012.pdf

最も大きな劣後債発行のトリガーは何だったのだろうか。