生命保険料控除は廃止が妥当

先日、奨められた保険。


「通貨指定型個人年金保険」、「米国ドル建終身保険(無配当)」

為替リスクまでとって、完全に利殖目的金融商品にみえる。
が、これらもまた生命保険料控除の対象になるという。

年間支払保険料10万円以上で所得税5万円、住民税3万5千円が所得から控除される。
(参考:国税庁「生命保険料控除」http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1140.htm

節税額は、課税所得195万円超330万円以下だとして8,500円。
課税所得が1,800万円超ならばなんと32,950円の節税になる。
(参考:国税庁所得税の税率」http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm

<注>上記は2011年12月末日までの保険契約の場合。2012年1月1日以降締結の契約から新制度の適応となる。

生命保険料が所得から控除される理由は何か。

保険料控除とは、生命保険の普及(マクロ政策的に見れば長期貯蓄の奨励や国民の自助努力の支援)を目的として、契約者が1年間に支払った保険料の一定部分を契約者の課税対象額から控除することによって所得税及び住民税の軽減を図る制度である。
出口治明「生命保険入門」)

生命保険はもう充分すぎるほど普及している。

生命保険料が所得から控除される理由は確か「生命保険は国の社会保障制度を補完するものという位置づけだから」であったと記憶している。

生命保険といえば遺族生活保障。しかし。

憲法
第25条 すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。 

第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

「生命保険加入で遺族の生活保障を!国民の自助努力を国が税制優遇してバックアップします。」というのも分からないではないが、どうもひっかかりを感じる。

生命保険料が払えないほど貧乏な親の子どもは、親が死んだら健康で文化的な最低限度の生活を営めない、教育を受けられないということにはなるまい。
どんな家庭環境に生まれても、適切に保護され、教育の機会が与えられ(奨学金制度の充実など)、這い上がれる環境を社会全体で(税金を投入して)整備すべきだろう。

大体、日本で最も貧困に苦しむ世帯は死別した母子家庭ではなく離婚した母子家庭だ。死別なら遺族年金があるが離別はない。そして離婚リスクは意図的にリスクコントロールが可能なので保険ではヘッジできない。

それにどうも現実には利殖目的での保険利用が多い気がする。生命保険料控除は事実上、金持ちのための税制度になっていないだろうか。


生命保険料控除は廃止が妥当。理由は2つ。

・生命保険会社以外の利殖目的金融商品には生命保険料控除なる節税制度がないのに、生命保険会社の商品だと、もろに利殖目的商品でも生命保険料控除で節税という大きなメリットがあるという割り切れない不公平感を是正できる。

・生命保険料控除を廃止して、増えた税金は貧困層対策、教育体制の充実にまわした方が社会全体のメリットが大きいのではないか。


生命保険料控除が廃止されれば税務署、各会社の給与担当、各個人が生命保険料控除のために割いていた労力も節約できる。

社会的意義のない制度に労力とコスト(人件費、システム経費等々)をかけるのはやめた方がいい。