貯蓄を目的として生命保険を検討してみる

ニッセイライフプラザにて。
「保険に入るにあたっては、何のために加入するのか、目的をまずはっきりさせることが必要です」。
まさにその通り。正論だ。だが正論がさらりと言えるということは意外に難しいことだ。それが言えるのは、さすが日本生命だと私は思う。
では正論にのっとり早速いってみよう。

貯蓄(利殖)を目的として保険加入を検討してみる。

一、まずは保険商品の検討から。
保険の基本形は、定期保険・終身保険養老保険の3つ。
「3つの保険の違いは何?」という場合はこちらを参照。

生命保険文化センター 知っておきたい生命保険の基礎知識 主契約の種類
http://www.jili.or.jp/knows_learns/basic/kind_main/index.html

貯蓄を目的とするなら、終身保険養老保険日本生命のホームページで2つを比較してみる。払込方法は一時払。月払や年払で払うより割引が大きいので有利だ。


注)シミュレーションの生年月日等は仮。年齢や金額によって大分結果が違うので注意。

「将来受取額表」をチェックする。

チェックポイント
1.元本割れが解消されるのはいつか。
終身保険:3年目。養老保険:5年目。

2.養老保険の満期時(10年後)の返戻率の比較
終身保険:106.8%。養老保険103.6%。

どちらの点からも終身保険の方が有利なことが分かる。

他社も検討してみる。資産規模では日本生命を凌駕しているかんぽ生命に終身保険の見積もりをお願いしたら、こんな見積もりが出てきた。


※保障設計書の一部を抜粋して当方で再作成。

これでは全く貯蓄目的にならない。大赤字である。
まず特約は不要だ。貯蓄目的であれば余計な特約はいらない。特約の保険料を払う分だけ不利になる。

大体、「災害特約」は災害死亡時に割り増し保険金が払われる特約だが、私には存在意義が分からない。災害死亡と病死などの死亡で、遺族の必要保障額が変わってくるとも思えない。災害特約は、保険料計算がしやすく「グリコのおまけ」みたいにさりげなくつけて保険料を若干アップさせることがしやすいという保険会社にとって大変メリットの大きい特約なのではあるまいか。

改めて、かんぽ生命・終身保険・保険金額300万円・特約無しの見積もりを出して頂いた。

やはり当たり前だが前納払込(契約時に払込むべき保険料をまとめて払込む方法)が有利。

問題はこちらの「解約返戻金等の推移表」だ。

月払の場合しか記載されていない。月払の場合、元本割れが解消するのは、なんと22年以上たってからだ。

もちろん、有利に契約したいと思えば当然、前納したい。前納であれば元本割れ期間は随分と違ってくるはずだ。
「前納した場合の推移表がいただきたいのですが。」
なんと驚くべきことに「出せない」という。手計算ならって一体どういうことだ。解約返戻金の推移が提示されない保険に契約などできない。
残念ながら「かんぽ生命、論外」と言わせていただこう。


ニ.税制面から生命保険を検討してみる。
2011年12月末日までの保険契約の場合、生命保険料控除により、年間支払保険料10万円以上で、所得税5万円、住民税3万5千円が控除される。
<注>2012年1月1日以降締結の契約からは新制度となっている。
(参考:国税庁「生命保険料控除」http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1140.htm

節税額は、課税所得195万円超330万円以下だとして8,500円。
課税所得が1,800万円超ならばなんと32,950円の節税になる。
<注>2011年12月末日までの保険契約の場合。
(参考:国税庁所得税の税率」http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm


実は「(全期)前納」と「一時払」は契約者が「最初に全期間分の保険料全額をドンと払込む」というのは同じだが保険料の充当のされ方が違う。全期前納なら毎年保険料控除が受けられる。節税の面からは前納の方が有利である。

一時払=保険期間全体の保険料を契約時に1回で払込む。
前納=半年払・年払の保険料をまとめて払込む。

三.保険契約(貯蓄目的)のリスクをチェックをしてみる。
1.元本割れ期間中に保険解約をする可能性をチェック。

他に預貯金がない場合、早期解約では元本割れする保険契約をするのは得策ではないだろう。
まず、不意の出費に対処できる預貯金が別にあることが必要。
それと元本割れ期間中に解約返戻金が必要になるような予定(住宅購入など)が当面ないことも確認したい。

(補足)
日本生命の場合、保険料100万円でも300万円でも500万円でも解約返戻金は単純に3倍、5倍となるだけで「まとめて一本で契約する」メリットはない。保険料100万円以上から契約できるので、例えば500万円あるなら保険料100万円の保険を5本契約するとよい。将来、200万円必要になったら2本解約することで対応できる。

2.生命保険会社破綻リスクのチェック。

(1)生命保険契約者保護機構の内容をチェック。
生命保険会社が破綻した場合、「生命保険契約者保護機構」が保険契約を保護する。
その補償内容を確認してみる。「補償対象契約は国内における元受保険契約で、その補償限度は責任準備金等の90%」。つまり破綻したら保険金・解約返戻金は多少なりとも削減される。

詳しくは生命保険契約者保護機構のホームページで。
http://www.seihohogo.jp/

勿論、破綻しそうな保険会社に契約することは避けたい。また保険会社が破綻しそうだったら、破綻するかどうかはらはらしながら見守るより解約して解約返戻金を受け取った方が精神衛生上よさそうだ。

(2)契約を引き受けている保険会社(契約引受会社)がどこかをチェック。
例えば、郵便局で保険契約を申込んだからといってかんぽ生命が契約を引き受けているとは限らない。代理店業務で、他社保険を売っている場合もある。
そもそも「契約引受会社はどこ?」が実は重要なチェックポイントだろう。
あと、申込みをする前に生命保険契約者保護機構の補償対象契約かどうかも一応確認した方がいいかもしれない。保険契約のつもりが保険ではない金融商品だったなんていうこともあるかもしれない。

(3)契約引受会社の経営状況をチェック。
ソルベンシー・マージン比率という指標があるが、2008年12月に破綻した大和(やまと)生命のソルベンシー・マージン比率は555%。安全の目安とされる200%は優に上回っていた。
各社ともディスクロージャー誌をホームページ上に載せているので、一通り目を通したい。
私のような素人でも「よく分からないけど大丈夫なのか?この会社」と思うような会社は確かにある(あった)。
手軽さではネット検索して「ちょっとヤバイかもしれない」というニュースがないかどうかチェックが一番か。

(4)自分自身の今後の契約引受会社に関する情報収集体制をチェック
今、破綻リスクはなくても10年後、20年後は分からない。だから私は元本割れ期間が10年、20年という保険商品はパスしたい。元本割れ期間は長くても5年程度にしておきたい。
JALの破綻、古くは東邦生命や千代田生命の破綻を思い返してみると、破綻の2、3年前からは経営危機に関する報道があったように記憶している。
JALや東邦生命は大騒ぎされた末の破綻だったが、大和(やまと)生命は小さな保険会社だったこともあり、突然に感じられた。ただ、実際にはディスクロージャー誌などを注視していれば数年前から「確実にやばいな」という徴候はみえる。保険料等収入や保有契約高が劇的に減少しているとか。
年1回くらいは意識的にその保険会社の経営情報をチェックした方がいい。今後、その保険会社の経営状況を注視する気があるかどうかも保険契約をするか否かの一つの判断材料だと思う。

<貯蓄(利殖)目的で保険加入する際のチェックポイントまとめ>
1.払込方法は月払・年払より一時払か前納 → 一時払いか前納ができるまとまった金額(100万円程度)があることがまず必要。
2.一時払か前納か選択できるなら税制面からは前納の方が有利。
3.必ず「将来受取額表」や「解約返戻金等の推移表」で元本割れが解消されるのはいつかを確認(できれば元本割期間は3年程度にしておきたい)。
4.特約は削除
5.契約元受会社を確認。
6.契約元受会社の破綻リスクの確認。

こんなところだろうか。

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