うつくしいのはら
西原理恵子「うつくしいのはら」。僅か12頁の短編である。
- 作者: 西原理恵子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/10/26
- メディア: 単行本
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むしろ「うつくしいのはら」は日本文学の最高傑作だと私は思う。
世の中には様々な観点があるから、最高傑作は複数あってもいい。
この作品、「PLUTOによせて」となっている。西原氏は浦沢直樹の「PLUTO」について「だいたい いつまで読んでもまざんねえ交響楽みたいなまんが、かきゃあがって。あたしだったらぴゃーとかいてしゃーっとおわらせるよ」と言っている。
交響楽のように構成された作品は浦沢氏が得意とするところだ。それは西原氏にはない才能で、だから西原氏は浦沢氏をことのほか高くかっているように感じる。
しかし。
「天才は、凡人の数百ページを軽々と凌駕する」。
「うつくしいのはら」の読後、そんなフレーズが頭をよぎった。
反論が瞬時に浮かぶ。
勿論、浦沢直樹は凡人ではない。
例えば「Monster」は「そうか、日本の才能は漫画に流れているのか」と漫画に開眼させられた、私にとって記念碑的作品だ。
「軽々と」も違う。「うつくしいのはら」の前段に散々書き上げるまでの苦労について書かれている。
それでも頭をよぎったフレーズの鮮烈な印象は残存したままだ。
貧困や戦争、暴力の悲惨から抜け出すために必要なものは教育。それは特別な見解ではない。しかし。
ねえ おかあさん
ぼくたちは
いつになったら
字をおぼえて
商売をして
人にものをもらわずに
生きていけるの。わからない
それは誰にもわからないの。でも次にうまれて
ひとになるために
一つでも多くの言葉を
おぼえましょう
そして物語は美しい祈りに昇華してゆく。
「うつくしいのはら」、出来れば単独で本になって欲しいところ。
電子書籍、というのもありか。