フィリップス・コレクション展2018

2005年の「フィリップス・コレクション展(森アーツセンターギャラリー)」を観て以来、フィリップス・コレクションに夢中である。

「フィリップス・コレクションを観にワシントンに行きたい、いや、むしろ(フィリップス・コレクションに何度も足を運ぶために)ワシントンに住みたい」と思うくらいである。

フィリップス・コレクションは、ダンカン・フィリップス(1886-1966)が、彼の審美眼によって選定した美術コレクションである。彼が「フィリップス・コレクションにふさわしい」と判断した作品のみがコレクションに加わった。
私はこういう「卓越した美的感覚と見識を持つ特定のコレクターによってつくられたコレクション」が好きだ。
なお、ダンカン・フィリップスの死後は、後継者たちによってコレクションは積み重ねられ、フィリップス・コレクションは今や4000点以上の作品を所蔵している。


さて、2018年、日本では久々の「フィリップス・コレクション展」が三菱一号館美術館で開催された。

今回、来日した作品は75点。

今回の展示は、フィリップスがその作品を手に入れた順に展示されていて、コレクションの変遷を辿ることができる。

こういう視点の展示もおもしろい。
「その絵について、フィリップスはどこにどう着目したのか」という視点で観ることができたりするのも興味深い。

例えばゴーガン。数多あるゴーガンの作品の中でフィリップス・コレクションとなっているのは「ハム」。

なぜハム。

でも静物画を愛したフィリップスがこの画を獲得した理由は、この企画展をみるとなんとなくわかるような気がするのだ。

 

それはそれとして、今回、特に印象に残った絵についてここに記録しておく。

 

◆ジャン・シメオン・シャルダン「プラムを盛った鉢と桃、水差し」1728年頃
(1920年収蔵)

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ダンカン・フィリップスが「まさに至高の静物画」と評した作品。

水差しのひびの表現も含めて「繊細さの極致」とたたえたれているが、水差しのひび割れの表現は細かすぎて、よくよく近づいてみないと分からない。近づいてよくよく観ると「ひび割れすぎやろ」とつっこみたくなるが、それはそれ。

 

◆クロード・モネ「グェトゥイユへの道」1879年
(1920年収蔵)

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モネの絵には、「ここだ!」という「絵に焦点があう位置」がある。この鑑賞ポイントは人によって違う。私は遠視気味なので、この鑑賞ポイントが絵からかなり遠い。だからモネの絵は広くて空いている展示室で観たい。モネの絵は、絵からの距離で驚くほど印象が変わる。それがおもしろい。モネの絵については距離をとって鑑賞できることがとても重要なのだ。


◆アルフレッド・シスレー「ルーヴシエンヌの雪」1874年
(1923年収蔵)

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降る雪の質感や、こうした雪の日の空気感がリアルに記憶からよみがえる。この絵、凄い。

 

◆アンリ・ルソー「ノートル・ダム」1909年
(1930年収蔵)

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ルソーの描くしんとした風景が好きだ。この絵は、展示室に入った瞬間に目をとらえて離さない。

 

◆ポール・セザンヌ「ベルヴュの野」(1892‐95年)
(1940年収蔵)

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◆ワシリー・カンディンスキー「秋 Ⅱ」(1912年)
(1945年収蔵)

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水面に風景が映っている。なんと色鮮やかな湖と山の風景画。

 

◆ジョルジョ・モランディ「静物」1953年
(1954年収蔵)

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この静物画、モランディの作品の中でも特にかっこいい。

 

◆クロード・モネ「ヴァル=サン=ニコラ,ディエップ近傍(朝)」1897年
(1959年収蔵)

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この絵は光を描く画家、モネの真骨頂ではないだろうか。凄すぎて言葉を失う。しかしこの凄さ、実際に観てみないと分からない。

 

★★★

 

【フィリップス・コレクション展概要】
フィリップス・コレクション展 三菱一号館美術館
会期:2018年10月17日~2019年2月11日

https://mimt.jp/pc/