2015年、驚きの日本の殺人数

2015年の日本の殺人による死者数があまりに少なくて驚く。

警察庁「平成26,27年の犯罪情勢」によれば、殺人による死亡者数なんと1年で363人。
日本には1億2000万人以上も人が住んでいるにもかかわらず、たった363人。

https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/h26-27hanzaizyousei.pdf

厚生労働省平成27年(2015) 人口動態統計(確定数)の概況」によれば、他殺の死亡者数は314名。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei15/index.html

なんで差があるのか。「傷害の結果の死亡」なども「他殺」に入るのではないかと思うので、厚労省の他殺数の方が多いならわかるが、なぜ警察庁の殺人による死亡者数の方が多いのか分からないが、いずれにしても300人台だ。

2005年の時点で643人。2010年からついに500人を割る。

もちろん、警察庁の殺人による死亡者数は、殺人として認知された件数だけで、実際の殺人件数は「神のみぞ知る」だ。
すべての殺人を把握するなんて、過去のいつにおいても、また、どの国でも不可能だ。

昨年、印象的な殺人発覚事件があった。

2016年、元暴力団員の矢野治死刑囚の「告白」で、1998年から行方不明になっていた斎藤衛氏の遺体が見つかった。斎藤氏は「オレンジ共済組合事件」の関係者だった。
当時、「多分、殺されているんだろう」と思っていたが、これほど年月を経て「やっぱり殺されていた」という事実が白日にさらされるとは。なかなか感慨深いものがあった。

暴力団という「プロ」による発覚しない殺人はそこそこあるのだろう。

かように行方不明者の中には殺人の被害者が何人かは含まれているだろう。

とはいえ行方不明者の状況をみると、決して多くはないことがうかがえる。

警察庁生活安全局生活安全企画課の「平成27年中における行方不明者の状況」をみてみよう。

https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/fumei/H27yukuehumeisha.pdf

2015年の行方不明者は82,035人。しかし、2015年に所在が確認された行方不明者も80,232人いる。
2015年の行方不明者82,035人のうち、最終的に所在確認がされないままとなってしまうのは何名なのかは分からない。

だが、所在確認される確率は高い。

というものの、2012年に発覚した尼崎連続変死事件は、関連する多数の行方不明者がいた。長期にわたって沢山の人が殺されたり暴力にさらされた状況が放置されていた。何度も警察に相談や通報が行われたにもかかわらず、だ。警察の体制には明らかに問題があるだろう。

また、事故死や病死とされた中に、殺人もいくぶんか含まれている。
実際、1998年以降、「犯罪死の見逃し等事案」は50件近く把握されている。

ただ、そうはいっても殺人の暗数はそう多くはないだろう。
そして、昭和の時代に比べたら、暗数が激減していることは断言できる。

第一に、暴力団またはその他の犯罪組織と警察の癒着もものすごく薄くなっている。被害者が暴力団員であっても、「お目こぼし」はないだろう。昭和の時代とは違う。

第二に、技術の進歩だ。今は薬物検査キットがあるし、CT検査もできる場合が増えた。2012年には「死因究明等の推進に関する法律」が施行されているし、死因究明体制もどんどん整備されつつある。

また、個人的に大きいと思うのは、2013年から生命保険加入状況照会が一元的にできる体制が整ったことだ。特に1980年代から90年代前半にかけて「知られざる保険金目的殺人」は、それなりの数、あっただろうと思っている。なにしろ緩い時代だった。

今、かなり殺人を防止する社会的体制は整備されていると思う。

にしても、殺人による死亡者数は、ここまで減りうるのか。

つくづくすごい。


【参考資料】
「犯罪死の見逃し防止に資する 死因究明制度の在り方について」
https://www.npa.go.jp/sousa/souichi/gijiyoushi.pdf