プロスポーツ選手と資産管理

野球界のスーパースターだった清原和博氏は、これまで推定で60億円稼いだと言われる。しかし、現役を引退して2016年現在、経済状況が相当に切迫していると取りざたされている。

清原氏と高校同期の、さらに華やかな立場のスターだった桑田真澄氏は、親族の不動産投資の失敗で10億円を超える借金を背負った。

どちらもファンとしては聞きたくない残念なスキャンダルだ。

サラリーマンの生涯年収は、ざっくり2億〜3億円といったところだ。

スポーツ選手のスーパースターが1年で億の単位のお金を稼ぐ、というのは憧れを喚起する意味でも悪くない。

しかしだ。

2人とも、高校を卒業して、すぐにプロスポーツ界に進んで、いきなり大金を手にしている。

野球においては天才で、スーパースターであっても、高校卒業すぐの18歳というのは社会的にはナイーブな子どもに過ぎない。もっとも大学卒業すぐの22歳でも実質は大差なかろうが。

そんな子どもが大金を持つ。子どもがナイフを弄ぶより危ない。

何しろ大金には有象無象が群がる。

親が管理する、というのも無理がある。
数百万円ならば無理なく管理できるだろう。でも、億単位の資産管理ができる能力を持った人間など、そうそういるものではない。
更に不幸なことに、親や親族が、そもそも全く金銭管理ができなかったり、素人のくせに危険な投資に走るような、危なっかしい人間であるケースもある。

実際、桑田氏は、親族の投資失敗により10億円を遥かに超える借金を背負った。
清原氏は、良識的なご両親に恵まれたようだが、ご両親はあくまで町の電気屋さんだ。とても億単位のお金を管理する能力はなかっただろう。

しかも、プロスポーツ選手は、活躍期間が限られる。
プロ野球の場合、平均選手寿命が約9年、平均引退年齢は約29歳だ。

桑田氏は2006年引退、清原氏は2008年引退と、ともに20年を超え、現役として活躍したが、それにしても40歳そこそこでの現役引退である。

彼らのようなスター選手であれば、コーチやら講演やら解説やら、色んな仕事のオファーがあろうが、それにしても現役時代に比べれば収入は激減するだろう。

プロ野球選手とは、なんとライフプランニングが難しい人生であることか。


プロ野球業界が、高校卒業したばかりの子どもに数千万、億単位のお金を渡して放置だとすれば、ちょっと、いや、かなり無責任だと思う。

個人的には、ざっくり3000万円を超えるような年収があれば、通常、その資産管理には専門家の力が必要ではないかと思う。
あと、本人にもある程度の金融リテラシーが必要だ。専門家は、提案や事務手続きはできるが、資産は本人のものなのだから、「どうするか(何に契約するか、どう運用するか)」の判断は選手本人しか出来ない。

1.金融リテラシーとライフプランニング研修
2.(高額年棒者には)信託銀行等、資産管理の専門機関の紹介

この2つは、業界として必ず選手に提供しなければならないサービスではあるまいか。

むろん、選手が紹介をお断りするのは自由だ。

だが、大体、プロ野球選手は、サラリーマンとは違って年金等の福利厚生が非常に貧弱だ。
プロスポーツ選手向けの年金商品とか、まぁ当然あるのだろうと思うが、そこらへんも紹介するような体制整備はされているのだろうか。


それと「うちはプロスポーツ選手向けの資産運用サービス部門があります」というような金融機関はどこなのだろう。

桑田氏や清原氏のレベルのスーパースターであれば、よほど破滅型の人間でない限り、一生、それなりに裕福なレベルの生活を維持していて欲しいし、人生の終焉には、球界の関連団体(おそらく公益法人)にいくばくかの寄贈がある、というのが理想的なあり方だろう。
そうした「成功した人間としての、お手本のような人生のあり方」は球界、スポーツ界のブランド力、求心力の強化にもつながるだろう。

選手をただ「消費」するのではなく、選手の人生や経済面のサポート体制を整備することは、スポーツ界にとって間違いなく重要な課題だ。