リコーの社内・就業時間内全面禁煙宣言

2015年1月、リコーが社内・就業時間内の全面禁煙を宣言した。

http://www.ricoh.com/ja/release/2015/0107_1.html

・目的は「リコーグループで働く人たちの健康障害防止・健康増進と、社内における受動喫煙防止」
・外部者含めリコーグループの敷地・建物内全面禁煙。
・リコーグループ従業員は休憩時間を除く勤務時間内完全禁煙。
・喫煙者への禁煙支援を行う。


当然の対応だな、と思う。なぜ全面禁煙が当然の帰結なのか。

大前提)喫煙リスクは明白である。

WHOによれば、現在、死亡者の10人に1人は喫煙が原因となっており、総数で年500万人以上もの人が死亡している。そして、喫煙は死亡原因の最大の要因であり、かつ、喫煙関連疾患は禁煙により防げることから、予防可能な単一疾患としては最大の病気である。
日本学術会議「脱タバコ社会の実現に向けて」)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t51-4.pdf

喫煙者はがん、脳卒中・血管疾患、呼吸疾患などのリスクが高くなる。
喫煙による疾患によって、リコーの健康保険組合の財務は確実に悪化する。さらに社員が罹患して病気休暇、病気休職となれば会社自体の負担も発生する。

喫煙者本人だけが疾患リスクが高くなるなら自己責任ということで、負担増加は「受け止められる損失」としてよいのではないか。と主張する人もいるだろう。
これにも反論があるが、とりあえず大問題は受動喫煙である。

タバコの煙はタバコから直接喫煙者に吸い込まれる主流煙と天下部分から大気中に散布される副流煙がある。副流煙は喫煙者から吐き出される主流煙とともに、生活空間を汚染し、周囲の人が吸入してハイに至る。副流煙には2000種類以上の化学物質が含まれているが、不完全燃焼状態で発生する副流煙の方が主流煙より化学物質の量が多く、たとえば、発がん性の高いN-ニトロソジメチルアミンは数10倍も多いと報告されている。受動喫煙により、肺がん、虚血性心疾患、呼吸器失陥などの発生頻度が増加することが明らかにされている。日本学術会議「脱タバコ社会の実現に向けて」)

受動喫煙リスクを考えれば「全面禁煙が当然」とならざるをえない。
なぜ全面禁煙とならざるをえないか。

職場における実態をみてみよう。

2003年の健康増進法を受け、オフィスの自席で喫煙する風景はなくなった。2003年以前は、自席の前やら近くでタバコを吸われていたのは本当に辛かった。日々、「耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで」いたわけである。

で、2003年以降、オフィスはどう変わったか。

事例1)各フロアに喫煙ルームを設ける → 喫煙ルーム周辺に席がある人はかなり煙い。ニコチン濃度を測定してみたら相当な数値が出る。
事実、ある職場で「喫煙ルームに近くてタバコの臭いが耐えられない」として辞めた若いアルバイトがいた。ごたぶんにもれず「最近の若い者は」という昭和のおやじトークがあったわけだが、はっきり言って、「辞めたのは正しい判断だ」と思う。たいした時給でもないし、他でも仕事あるし。不快な環境に耐える必要はさらさらない。

事例2)休憩所とか社食近くに喫煙ルームを設ける → 「休憩や食事時が不快すぎる」と非喫煙者から大ブーイング。

中には「医務室の隣が喫煙ルームで、医務室にいると受動喫煙に常にさらされる(常に煙い)」というなかなかシュールな事態になっているケースもある。
さすがに産業医からも改善要望が出る。

事例3)ビルの屋上など、喫煙所を1か所に集約する → 喫煙者が「喫煙所に行くと30分は帰ってこない」とかいう状態になり、非喫煙者に不公平感が生じる。

どこの会社も禁煙ルームの設置には苦慮していると思う。

大体、喫煙ルームは、割と悪質な「付き合い喫煙」を生む温床となる。

付き合い喫煙の事例1)
フロアに喫煙ルーム設定。ヘビースモーカーの部長(とか部署の権力者)との打ち合わせや仕事の報告の多くは、喫煙ルームで行われる。→この部署に配属された若手社員は、仕事を円滑に進めるために喫煙者にならざるをえない。

もっと残念な事例2)
非喫煙者の部下を喫煙ルームに呼んで打ち合わせ。

ヘビースモーカーの上司に悪意はない。しかし、それ、普通にパワハラ。本人は気が付かないけど。パワハラなんて言ったら仕事上の不利益がもろにふりかかるけど。


リコーの場合、車での営業もあるので「営業車における喫煙」も問題になっただろう。タバコを吸った車内はほんとに耐え難い臭さだ。

かように「勤務中の喫煙」が引き起こす問題は多い。

で、「そもそも勤務中、仕事場に喫煙する場所を設ける必要があるのか?」という至極当然の疑問が立ち現れるのだ。

「勤務時間中および社内は完全禁煙」。
これ、会社における当然のスタンダードだろう。

さて、本来、リコーより禁煙が「当然のスタンダード」であるべき会社って沢山あるのではないか、と思うわけである。

さて、リコーを基準にして「リコーすら社内完全禁煙とする。ましては我が社おや」という会社はどこか。
「うちの会社、○○なんだから、当然、禁煙なんじゃね?」という○○に入る業種を考えてみた。


【ランクA(禁煙じゃなきゃまずいんじゃね?系)】

・医療法人
・製薬会社

治療だの医療だの、健康を扱う場で喫煙はヤバいでしょ。

・高校以下の学校法人
・学習塾、スポーツクラブなど
・保育園、幼稚園

未成年者を集めてるのに喫煙はないわな。

・食品工場

白い作業着姿の従業員が休憩時間にタバコすぱすぱという光景を見かけた。
タバコの有害物質って服について残留するし。
従業員の喫煙て、昭和の時代は仕方なくても21世紀スタンダードとしては「ないわ」「常識外」という典型事例だろう。


【ランクB(禁煙すべきじゃね?系)】

・接客業(レストラン、ホテル等)
グローバルダイニング星野リゾートは既に喫煙者を採用していない。

・生命保険会社

喫煙で死亡率を上げてどうする。

・化粧品会社

【ランクC(健康という観点からじゃないけど禁煙すべきじゃね?系)】

・建設現場

よく積み上げた材木の脇で喫煙しているのをみるんだが、なんか危なげ。

・消防署、損害保険会社

火災の原因の9%はタバコの不始末。職業上、リスクは排除すべきかと。