それでもスタバを選ぶ理由

これは自信をもって断言するのだが、「ドトールとスタバなら、ドトールのコーヒーの方が断然美味しい」。

ブランドイメージを一旦横に置き、冷静に飲み比べてみれば多くの人が同意するだろう。
コーヒーの味だけ比べたら断然ドトールに軍配が上がる。

しかし。

もしも目の前にドトールとスタバがあったら、私は迷わずスタバを選ぶ。

なぜか。

「スタバは店内完全禁煙で空気がきれいだから」。
美味しさには空気も重要な構成要素だ。

ドトールは、店に一歩入った瞬間タバコ臭い店が多い。
確かに分煙している店もある。しかし分煙なんて半端なのだ。
というか狭い店内では分煙は無理。喫煙室のドアが開けば店内中にタバコの臭いが拡散する。

とはいえドトールには、愛煙家サラリーマン諸氏の溜まり場だったという歴史がある。
完全禁煙にしたら悲しむ常連愛煙家もいるだろう。
ドトールが完全禁煙にならないのは、個人的には大変残念であっても歴史を思い起こせば、まぁ理解できないでもない。

しかし後発ブランドで、味だのお洒落さだのを売りにしたいらしいタリーズコーヒーなどが「分煙」などと半端なことをやっているのは理解できない。

言わせていただくが、分煙はそれほど快適ではない。喫煙ルームのそばはかなり苦痛だ。そして店によっては店内全体が苦痛だ。
スタバ以前は「コーヒーショップはこんなもの」という諦観があった。しかしスタバを知ってしまった今、そして日本学術会議の報告書でも明らかな喫煙リスクを踏まえたら、「ありえない」というストレスを感じる。

 タバコの煙には2000種以上の化学物質が含まれ、そのうち発がん性を伴っているものだけでも40数種類ある。国内外におけるこれまでの多数の疫学的および実験的研究によって、喫煙はがん、循環器疾患、呼吸器疾患、消火器疾患、胎児の成長障害、その他さまざまな健康障害の原因になっていることが科学的根拠を持って示されており、喫煙がもたらす直接的健康障害に関しては、議論の余地がないといえる。

 さらに、タバコは喫煙者のみならず周囲にいる非喫煙者の健康にも悪影響を及ばしている。

(出典:日本学術会議「脱タバコ社会の実現に向けて」)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t51-4.pdf


ここで完全禁煙にするメリットを上げよう。

1.客の質が上がる。

今日、「タバコが健康に及ぼす悪影響」は周知の事実である。
明白なエビデンスにもかかわらず、今もタバコを吸っている人というのは「ちょっと、いやかなり残念な人」だろう。しかも、日常生活でも様々なデメリットがあるにもかかわらず吸っているわけで、いろいろアレな人の可能性が高いと判断できる。

はっきり言えば「ガラの悪い客」や「トラブル可能性が高い客」をざっくりふるい落とす方法として、「完全禁煙」は非常に有効だ。
スタバは「禁煙」によって上手く客を選別している。

2.完全禁煙にした方が、顧客満足度が向上するし客が増える可能性が高い

「一旦店に入ったもののタバコ臭くて注文もせずに撤収した」という体験のある人は多いのではないか。
タリーズコーヒーなどにも「二度と行くか」と思うほど臭い店がある。狭い店で分煙なんて、そもそも無理なのだ。
さらに言えば、1人でも喫煙者がいると空間全体が台無しになる。

で、そもそも世の中に喫煙者がどのくらいいるのか。

(出典:2013年「国民生活基礎調査

なんと成人の約22%に過ぎない。学生の利用が多い店もあることを考えれば、顧客層における喫煙率はさらに下がる。

約80%にとって喫煙スペースは不要だ。そしてこの80%の中には「完全禁煙なら利用する」という層が確実に存在する。

例えば、2011年福島原発事故の時の、世の母親達の過剰反応は忘れられない。
しかし、守るべき子どもを抱えた母親というのはリスクに過敏になるものなのだろう。
あんな微々たる放射能に強烈な拒否反応を示した母親達が、遥かに、そして明らかに子どもへの健康リスクの大きい受動喫煙を無視するわけがない。

分煙だろうが、喫煙スペースのある店に子どもを連れて入るわけがない」という母親は多いだろうし、その判断は妥当である。

3.コーヒーの味が向上する。

コーヒーは香りを楽しむものなのに、タバコ臭がそれを台無しにする。
空気も美味しさの構成要素だ。
現状、「空気までトータルでみればドトールよりスタバのコーヒーの方が美味しい」場合が多いのだ。
まぁ確実に言えるのは「ドトールのコーヒーは店内環境で大きく損をしている」。

4.従業員の労働環境が向上する。

どのコーヒーチェーンも働いている人が若い。10代が働く店で、喫煙可能なのはいかがなものか。未成年にもかかわらず受動喫煙リスクにさらされるわけである。言うまでもなく未成年者の方が喫煙の影響が大きい。
灰皿だのを片付けるのも体に悪いはずだ。別に10代じゃなくても、吸い殻の片づけなんて不快な上に健康に悪い。

完全禁煙にすれば、従業員の労働環境も大きく向上する。
「企業の社会貢献」をいうなら「自店舗完全禁煙の推進」は立派な社会貢献だ。

5.未成年者喫煙容認という社会的責任リスクを回避できる。

喫煙席で明らかに高校生ないしは未成年者だと分かる集団がタバコを吸っているとしよう。
その状況をそのまま放置するとしたら「店が未成年者の喫煙容認している」ことになる。それは「企業の社会的責任」の観点から大いに問題だろう。

しかし、実際問題として「未成年者の喫煙はダメです」なんて店が注意することはまずない。できない。
大体、注意したら絶対トラぶりそうな、見るからにヤンチャな集団に対応しろなんて、それは無茶ぶりというものだ。もしも「未成年者の喫煙に対する適切な対応については各店舗に任せている」などという本部があれば「現場に無茶な責任を押し付ける最低な企業」と断じよう。


★★★

さて、東京都内におけるコーヒー店の状況である(2015年1月現在。コメダ珈琲は2015年7月現在)。

スターバックス 278店舗(店内全面禁煙)
・・・・・・
ドトール 391店舗(うち全面禁煙 28店)
エクセルシオールカフェ 85店舗(うち全面禁煙6店)
タリーズコーヒー 162店舗(うち全面禁煙店少々あり)
サンマルクカフェ 153店舗(うち全面禁煙店なし?)
上島珈琲 50店舗(うち全面禁煙店 5店)
珈琲館 65店舗(うち全面禁煙店 3店)
ベローチェシャノアール 125店舗(うち全面禁煙店 12店)
コメダ珈琲 33店舗(うち全面禁煙店なし)

スタバの差別化の成功とその圧勝は、当然の帰結だ。

タリーズコーヒーのような分煙を基本とした店舗戦略は愚策だ。「非喫煙者も喫煙者も満足な店舗」など、基本、無理なのだ。
非喫煙者も喫煙者も満足させたい」ならば、禁煙店と喫煙店でブランドを分け、立地を吟味して禁煙か喫煙かを決定して出店していくべきだ。


しかし、「いざ!完全禁煙!」のメリットが大きいのは明らかなのに、そして喫煙者は成人の22%と少数派なのに、なぜ全面禁煙の店がこんなにも少ないのか。まったくもって不可解だ。

もっと全面禁煙店が増えていい。

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2015年1月31日「東京の禁煙カフェ」