都内の霊園や墓地を移転して職住近接を実現する

通勤時間が片道1時間を超えるとさすがに生活の質に影響してくる。
もっと都心に住宅が供給されれば、職住近接で快適に生活できる人が増えるのに。

というわけで都心に住宅を増やす方法論である。

例えば、森ビルを率いた森稔氏などは、超高層ビルを建てることで職住近接の実現を提唱した。
「横がダメなら縦に広げればいいのに」。(←森氏の言葉を意訳)

正しい。

でも私には、超高層ビルに住むのは本能的な拒否感がある。
正直、タワーマンションなんて「よく買う人がいるよなぁ」「よく住めるよなぁ」と思ってしまう。

そんな超高層ビルを建てなくても、まだまだ都内に住居を増やせる余地はある。

注目は霊園である。

例えば、私は染井霊園は都内で最も素晴らしい霊園だと思っている。
広々、余裕のある配置。ところどころ植えられた染井吉野などの木々が風情をそえる。その上、高台に位置するので見晴らし抜群。本当に清々しい。

多分、染井霊園はこの辺りで一番いい場所にある。
高台。地盤も多分しっかりしている。おそらく大地震があってもここに建てた建物なら大丈夫だろう。すぐそばの地盤ユルユルな下町の住宅は壊滅しても。そして山手線駒込駅からもほど近い。

…なんでここが住宅地じゃなくて霊園やねん。

あまりにももったいなすぎる。

それは染井霊園だけではない。青山霊園なんて外苑前や乃木坂からすぐの都心ど真ん中だ。谷中霊園なんて日暮里駅の駅前。しかも高台。雑司ヶ谷霊園だって「都電雑司ヶ谷」からならすぐだし、池袋駅までも余裕で歩ける。

提案。

都立の雑司ヶ谷霊園(池袋)、谷中霊園(日暮里)、染井霊園(駒込)、青山霊園(外苑前、青山1丁目)は移転して、民間業者に跡地を売り払いって「ちょっとした高級マンションと緑地」にしたらいい。

染井霊園 67,911
谷中霊園 102,537㎡
雑司ヶ谷霊園106,110㎡
青山霊園 263,564㎡

合計540,122㎡

例えば駒込の高級大規模マンション「プラウ駒込」をみてみよう。
プラウ駒込:敷地総面積13,800㎡、全488戸(ファミリータイプ)。

プラウ駒込はマンション9棟からなるが、割と敷地いっぱいぎっちり建てられている。あの密度で建てたら各霊園の名木達は生き残れない。それは残さなければもったいないし、緑地もある程度残すべきだろう。

霊園開発の場合、マンション建築密度はプラウ駒込の6割くらいにとどめて緑地や折角の名木を残したい。

さて。
緑地をふんだんに残し、マンション建築はプラウ駒込の6割程度にとどめるとしても。
雑司ヶ谷、染井、谷中、青山合計でマンション建築面積324,073㎡。プラウ駒込の23.5倍。
プラウ駒込換算で供給される住居は11,460戸、一戸あたり世帯人数4人として45,840人分もの住居供給ができると見積もれる。
駒込、日暮里、池袋、青山に住める人が45,000人以上新たに誕生する。

ちなみに千代田区の人口は2010年時点で47,827人。
人口45,840人といえば、ほぼ千代田区の人口に匹敵する。

これは大きい。

そして東京を歩いていていつも思う。「東京は墓地と寺が多すぎる」。
中には「こんなぎっちり息苦しい墓地に墓参りに来るだとか、ましてや自分が入るとか絶対いや」と思う墓地もある。

<関連記事:「浄閑寺あるいは投げ込み寺」>

福井市史に倣い、こう提言したい。

「都内に散在する墓地を、このままに放置しておくことは、明るい町づくりの障害となり、また祖先の霊を祭るみちではない、さらに土地の有効的利用の面からいっても、これら墓地をどこか清浄な地に移すべきである。」

まったくのところ東京も、戦後の福井市の都市計画を見習って、墓地は移転の方向ですすめたらいいのに、と思う。
<関連記事:「福井市の戦災復興」> 
 

寺が浅草寺のような観光地だったり、植木市だの朝顔市だの地域や檀家のためのイベントを開催していたり、定期的に檀家の集まりの場をもっていたり、地域コミュニティに寄与しているのでなければ、寺は墓地ともども移転が妥当というものだ。

霊園や墓地の移転先は、清々しい景勝地で、行楽地としても魅力があるところがいい。
そしてもっというと、「清々しい景勝地だが、住宅を建てるには災害リスクが高い」という地がいいと思う。
具体的には鎌倉周辺などがいいんじゃなかろうか。

鎌倉は魅力的な地だ。「鎌倉に行く」と思えば断然墓参りのテンションも上がる。
で、鎌倉といえば海。景勝地であることは皆々認めるところだが、残念ながら津波リスクが大きい。津波で壊滅する可能性が高いところはできれば人は住むべきではない。真冬の夜に地震が来たとして、普通避難しないし。外に出たら風邪ひくリスクもあるし。

津波リスクの高いところに住宅があると津波にのまれて死者多数、住宅という財産、生活基盤も失う人多数という大惨事が発生してしまう可能性がある。

霊園なら少なくともそこで寝てる人はいない。また、絶対、自宅からより霊園からの方が迅速に避難しやすい。そして墓が流されても「生活基盤を失う」ことにはならない。
で、お墓が流されても「お墓、ご先祖が身を挺して生きている我々を守ってくれた」と解釈すれば「有難い話」となる。

そして何より、染井や谷中や青山に住めたら「夢のように快適な生活になる」人が沢山いるはずだ。