ミューザ川崎、天井崩落の原因と影響

2011年3月11日の地震によるミューザ川崎の天井崩落について、2011年4月25日に「ミューザ川崎の衝撃」として書いたところだが、天井崩落の原因について中間報告が発表された。
以下、引用の出典はケンプラッツ。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20110922/552852/?P=1

「強度計算が不十分」、ミューザ川崎の天井崩落
2011/09/27

川崎市は8月31日、東日本大震災で天井の大半が崩落したミューザ川崎シンフォニーホールについて、日本建築防災協会に委託した被害調査の中間報告を発表した。

 報告書では「天井下地を構成する部材や接合部について、必要十分な強度計算が行われたとは考えられない」と指摘。阿部孝夫市長は9月6日、「設計者と施工者に責任がある。賠償請求の方向で考えている」と語り、2012年3月の最終報告を踏まえて対応を決める考えを示した。

舞台や客席の上には重量鉄骨製のブドウ棚が架かる。そこからリップ溝形鋼と呼ぶC形断面の軽量鉄骨や吊りボルトを介して、厚さ8mmの繊維混入石こうボードを5枚張りした天井板を吊っていた。

 天井板と下地材の重さは1m2当たり合計で100kg弱。一般的な体育館の天井と比べて数倍重い。さらに、ホールの天井面は凹凸が多く、複雑な形状をしていた。いずれも音響効果を高めるためだ。

いうまでもないことだが音楽ホールであることは天井崩落の言い訳にはならない。首都圏で他に天井が崩落した音楽ホールはない。
NHKホール(1973年落成)や神奈川県民音楽堂(1954年開館)などの古いホールでも特に報道されるような大きな被害はなかった。また、音響に定評のあるサントリーホールでも特に損傷はなかった。

「体育館の天井より音楽ホールの天井の方が数倍重い」のなら、なおさら音楽ホールの天井崩落はまずいだろう。

3月11日の地震によって、天井板が下地材とともに落ちた。崩落後に調べたところ、吊りボルトをリップ溝形鋼に引っ掛けるフック状金具の多くが変形して脱落していた。

 報告書によると、設計者と施工者は工事中、天井の耐震性について何度か議論していた。

 まず、天井の固有周期を建物躯体の半分以下にして、共振を防ぐという設計の目標を設定。次に、天井下地に設ける斜め振れ止めの伸縮だけを基に、天井の剛性を計算した。

 その結果、斜め振れ止めの設置数が非常に少なくても、目標を満足できると判断した。フック状金具の変形などは考えていなかった。

 清水建設は「今の時点でコメントすることはない」と話している。

 復旧工事は11年8月、竹中工務店JVが18億6900万円で落札した。工期は12年12月まで。

工事費用は18億6900万円。では失われた利益は?

ミューザ川崎の閉館は約2年にわたる。その間に予定されていた公演は中止されたのか、それとも会場変更となったのか。その中止や会場変更で失われる、本来得られるはずだった利益と実際に得られた利益との差はいくらだと試算されるのか。

例えばミューザ川崎を本拠地としていた東京交響楽団では、このミューザ川崎閉館による逸失利益はどのくらいと試算しているのだろうか。気になるところだ。

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