マンションの危ない水災リスク

マンションの区分所有者が台風や豪雨で被害を被る可能性は小さい。
請求を受ける保険会社側からみれば「マンションだと水災の請求が非常に少ない」というのは事実だ。

「マンションだから水災補償はなくていいかな」と考えるのは確かに理解できる。
そして「水災補償はなしでいい」というのが合理的判断の場合も多い。
高台のマンションだったり高層階に居住している場合、水災の被害があるとは考えにくい。

しかし。

「お住まいは?」「マンション」と聞くとあっさり水災補償なしのタイプの申込書を契約者に渡してしまうのはいかがなものか。

東京都や神奈川県には水災リスクがある立地にもかかわらず地盤面を掘りまくっているマンションもたくさんある。
マンションの(自称)1階は、実際には(建築基準法上は)地下1階だったり地下2階だったりすることは珍しくない。

地下住戸は建築基準法で規制すべきだと思うが、とにかく現実としてあるものはある。

例え地盤面を掘るようなことをしていなくても、足立区、荒川区あたりの水災リスクは相当高い。

荒川が氾濫したら、北千住あたりは5m以上浸水する可能性がある。

足立区洪水ハザードマップ
https://www.city.adachi.tokyo.jp/kikaku/bosai/bosai/hazard-map-k.html


にもかかわらず、マンションであれば補償対象が1階の部屋だろうが足立区だろうがほいほいと水災補償なしの申込書を渡してしまう。これ、「大丈夫なのか?」と思う。

東京海上日動保険「住まいの保険」(2010年1月販売開始)

三井住友海上「GK すまいの保険」


地震補償については、一般に、もし地震保険に申し込まないのならば「地震保険ご確認欄」に確認印を押さなければならないことになっている。

地震保険に入らないと地震の場合の補償がないなんて知らなかった」「火災保険に入っているのに地震の場合は補償がないなんて許せん」というクレームの嵐やら裁判が生じないための努力である。

日本損害保険協会「火災保険契約申込書(イメージ見本)」
http://soudanguide.sonpo.or.jp/reference/pdf/application_sample_fire.pdf

しかし、水災補償のない火災保険に申し込ませるとき、「水災補償がないことの確認欄」はない。

荒川氾濫なんぞがおこったら、「水災補償がないとは知らなかった」「水災補償なしのプランしか提示されなかった(損害保険会社に落ち度がある)」という裁判が絶対起こるんじゃないかと私は予想している。

水災補償なしタイプの火災保険に契約、更新する場合は「水災補償がないことの確認欄」を設けた方がいい。

あと、マンションの場合でも必ず水災補償ありプランも同時に提示するように代理店に指針を出した方がいい。
代理店に立地や階層等で判断して水災補償ありのプランを提示せよというのは無理があるし。