2017年昭文社の株主総会に行ってみた

2017年6月29日、昭文社株主総会に行ってみた。

かつて、「昭文社(の地図)なくしては外を歩けない」と思っていた。旅行先でも、日常の外出でも、大抵、どんな時も昭文社の地図帳とともにあった。

しかし、いつの間にか、グーグルマップ愛用するようになり、カバンから地図帳が消えた。
私の記憶によれば、2012年頃までは、大体、どこのコンビニでも地図を置いていたと記憶している。今は置いているコンビニはついぞみかけない。
確かに、地図を買う必要性はなくなっている。スマホとグーグルマップのおかげだ。
スマホの普及によって、急速に紙の地図やガイドブックの市場が縮小している。スマホを使う層から見れば、ほぼ消滅だ。

昭文社は、環境変化に適応して生き残ることができるのか。

実は昭文社、2008年に「中期経営計画」を作成している。その中でこう宣言している。

電子事業への大胆な転換をはかり、売上の依存率も出版から電子へと大きくシフトさせてまいります。

2008年の中期経営計画では、電子事業の売上は、2012年に100億円を突破している見込みだった。だが、残念ながら、そうはなっていない。

2017年売上高のうち、
電子売上 28億円
市販出版物合計 58億円

2017年においても電子より市販出版物(紙書籍)の占める割合の方が大きい。というか、電子事業が育っていない。

大体、「電子事業へ大きくシフト」と宣言する割に、電子事業部門への人員配置が薄かった気がする。

昭文社の規模の会社なら、社長が相当程度の知識と技能を持って、難易度や作業負荷について適切に評価や判断ができないと電子事業も迷走しがちだろう。

残念ながら、黒田社長や取締役のITやコンテンツへの理解がかなり覚束ない印象がある。
電子事業へのシフトは、残念ながら手にあまる難事業だったようだ。

2017年の昭文社の決算は、ここ数年でもっとも厳しいものだった。
売上高20.9%減の103億円。営業利益、経常利益、ともに22億円の赤字である。

さすがに2017年は無配だろう、と思いきや。
こんな赤字決算にもかかわらず、1株20円という高配当を実施するという。

当社は安定的な配当の継続を行うことを基本方針としております。
昭文社「第58期定時株主総会招集ご通知」P.36)

いやいや、今期はさすがに普通にいけば無配だろうに。

しかしながら、利益はなくとも資本準備金を30億円減少させて資本剰余金に振替えのて「みなし配当」。しかも配当金額は例年と同額。マジか。なんでや。

ここで昭文社の大株主上位2名をみてみよう。

黒田 敏夫(昭文社創業者。黒田社長の父) 3,574,000株
黒田 茂夫(昭文社社長)1,699,000株

黒田敏夫氏の配当収入は7,148万円。
黒田茂夫社長の配当収入は3,399万円。

経営者が大株主だと、何が何でも高配当を維持するということか。

これ、昭文社の従業員からみたら、相当にオモシロくないのではないか。

なにしろ、2017年、昭文社は取締役を2名減員した。
従業員からみれば、高給をゲットできるポジションが二つ減ったわけだ。

さらに「業績連動型人事制度」なるものを導入するという。
劇的に市場が縮小し、未来の展望がみえないこのタイミングで。

昭文社、これで従業員のモチベーションを維持できるのだろうか。

ついでに、2017年で監査法人が変更となる。
大手監査法人トーマツからA&Aパートナーズという、随分とマイナーな監査法人に。

大手でなくても監査できる事業規模なので、報酬のお高い大手のトーマツから他社に変更する、というのは理解できるが、準大手監査法人もすっとばして変更するのか。

今後、トーマツよりはユルい監査になるのだろう、とも推測する。

昭文社東芝的チャレンジ、粉飾などの不正勃発のフラグが立ちまくってる気がするのだが、大丈夫なのだろうか。

【関連エントリ】
2017年7月12日「昭文社にみる市販出版物売上高と返品率」
http://d.hatena.ne.jp/falken1880/20170712#p1