赤坂プリンスホテル取り壊しとは

2011年3月、赤坂プリンスホテルが閉館した。理由は「老朽化による競争力の低下」。以後、避難所として利用されていたが6月末をもってそれも終了。今後、新館の取り壊しが予定されている。

ちょっと待って欲しい。同ホテル(新館)は、着工1980年3月、竣工1982年11月である。完成から30年足らず。これで「老朽化により取り壊す」と言われては、立場のないホテルやマンションが数多あるのではないだろうか。そもそも40階建ての巨大な建造物を30年足らずで取り壊してはあまりに非効率だ。

分譲マンションを考えてみよう。30年足らずで「老朽化により」建て替えなければならないだろうと思ってローンは組んで購入している人はいないだろう。なにしろ35年という長期のローンさえ普通に組まれているのだ。まさか購入者はローンが終わらないうちの取り壊しを想定していまい。

実際、築30年を超える分譲マンションは市場に多数存在するし、東京都では都内の築30年超のマンション戸数を次のように予測している。
2020年には築30年28.1万、築40年31.5万の計59.7万戸
2030年には築30年38.2万、築40年59.7万の計97.9万戸

2020年、赤坂プリンスと同世代もしくは更に年上であるにもかかわらず現役をはっているマンションは31.5万戸あるという予想となっている。

 今後、築30年を経過したマンションが急速に増加することが見込まれています。
 マンションの耐用年数は、それぞれのマンションの状況により異なりますが、それをそのまま建て替えるとすれば、個人の財産や社会的なストックの損失につながります。
(東京都都市整備局)

赤坂プリンスホテルはあの丹下健三の設計した壊すに惜しい美しいホテルだと思っていた。それを取り壊すとは、東京都としても貴重な景観、建築物を失うことになるのではないか。

最後の見納めに行ってきた。

しかし近くでみるとファサードで使われている資材は安っぽいような。

いまだ30年たっていない証拠写真。この大理石のような壁は高級感ありか、と思った瞬間、亀裂発見。

…もしかして赤坂プリンスホテルは安普請なのか?

30年足らずでの「老朽化」による取り壊し。改修費用がかかりすぎるというが、改修費用が膨大になってしまうなんらかの要因、欠陥があるはずだ。その欠陥は何なのか。

ケンプラッツ「建築巡礼寄り道2」を読む。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20110721/548676/

西武ホールディングスの後藤高志社長は、赤プリ建て替えを決断した主要因として、客室の天井高が「240cm」と低いことを指摘していた。1970〜80年代に都内に開業した大型ホテルの客室天井高は240〜250cmが一般的で、赤プリが特に低いというわけではない。

赤プリの天井高を「低い」とはほとんどの日本人、アジア諸国の人々は感じないだろう。
大体、料金設定もビジネスホテル並の赤プリに、外資系超ラグジュアリーホテル並みの天井高は誰も要求していない。例えプリンスホテルの最高ブランドである「ザ・プリンス」で天井高240cmであっても、ほとんどの人は文句はないだろう。ましてや赤プリは「ザ・プリンス」より一つ下のブランドとなる「グランドプリンス」である。

天井高240cmは取り壊しの言い訳にはならないと思うのだが。


赤坂プリンスホテルグランドプリンスホテル赤坂
設計:丹下健三
施工:鹿島建設

やはり取り壊すには惜しい。

(更新:2011年8月22日(ケンプラッツ記事追加))