熊本地震、ブロック塀と若者の死

熊本地震で、29歳の若者が亡くなった。

その報道(2016年4月17日 毎日新聞)は、亡くなった若者の職業や、家族や友人が語る人柄や、恋人の存在といったプライベートに重心を置いた記事だった。

死者を悼む意図は理解できるにしても、個人的には、死者の人柄やプライベートを載せる感傷的記事はあまり好きではない。

例え、人柄に難がありまくり、恋人のいない若者であったとしても、29歳の死はとても痛ましい、と思うのだ。

この件で、ぜひ大きく報道すべきなのは若者の死亡原因だ。

「ブロック塀が倒れ、(体力等に恵まれた)若い男性が死亡した」。

ブロック塀、危な過ぎる。

29歳の若い男性すら、死に至らしめる。
このブロック塀があったのが、小学生の通る通学路だったら。登校時間に地震が起こったら。
想像するだに惨事である。

実は、1978年の宮城県沖地震では、ブロック塀の倒壊により18名が死亡している。
耐震性のないブロック塀はあまりに危険、というわけで、現在、ブロック塀は、鉄筋で補強することが義務付けられている。

熊本地震で倒壊したブロック塀は、基準を満たしていたのだろうか。
ブロック塀は、建築基準法施行令第62条の8(へい)、平成12年建設省告示第1355号で最小限守らなければならないことが規定されている。

もしも、ブロック塀が、基準を満たしてなかったら。
責任を問うこともありうるだろう。


法テラス「地震とブロック塀 補修進めよう 倒壊の責任負う可能性」


ブロック塀の倒壊のリスクは、直接、人を死傷させることにとどまらない。
ブロック塀が倒壊して道をふさいでしまうと、火事が起こっても消火活動が出来ないかもしれない。人々が逃げられないかもしれない。
道路を片付けないと、支援物質なども届かない。
道路の確保は、減災に何よりも重要なのだ。

ブロック塀、侮るべからず。

だからこそブロック塀の撤去費用や改修費用を助成している自治体も多い。

厚木市では、2016年、1件あたり最高30万円の助成を実施している。
http://www.city.atsugi.kanagawa.jp/shiminbenri/anshinanzen/bousai/taisaku/p000865.html

刈谷市では、撤去費用に、最高10万円助成。
https://www.city.kariya.lg.jp/kurashi/sumaikankyo/sumai/jyosei/burokkubeitekkyo.html

例え自治体の助成がないにしても、ブロック塀倒壊のリスクはなくすべきだろう。

熊本の地震では、ブロック塀倒壊により1人の若者が亡くなった。
もし、このブロック塀が、危険なまま放置されていたものだったら。
下衆な報道路線でいけば、ブロック塀の所有者インタビューをして欲しい。

「あなたのお宅のブロック塀で、前途ある若者が亡くなりましたが、今、どんなお気持ちですか?」

普通、そんなインタビュー絶対受けたくない。
というか、自宅のブロック塀で人が亡くなったらかなりつらい。

ブロック塀対策の重要性について、強調しすぎることはない。

【2018年追記】

この件について、塀の所有者らに約6800万円の賠償を求めた訴訟がおこっている。

このブロック塀の下敷きになったのは、亡くなられた男性だけでなかった。
50代女性も下敷きとなり、左脚粉砕骨折の大けがで障害が残っている。
ブロック塀は高さ2.15メートルでコンクリート擁壁(高さ2メートル)の上に建てられ、擁壁と塀を接続する鉄筋や建築基準法施工令で設置が義務付けられている補助壁はなかった。

【参考】
2018年6月20日熊本地震 ブロック塀倒壊訴訟、所有者側は請求棄却求める」(毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180621/k00/00m/040/053000c