熊本地震とマンション被災

2016年の熊本地震は、「地方都市で震度6強以上の地震が起こった事例」として興味深い。
2016年4月16日本震で震度6強または震度7だった地域は以下のとおりである。

震度7 熊本県益城町宮園、西原村小森
震度6熊本県: 南阿蘇村河陽、菊池市旭志、宇土市浦田町、大津町大津、嘉島町上島、 宇城市松橋町宇城市小川町、宇城市豊野町合志市竹迫、熊本中央区大江、 熊本東区佐土原、熊本西区春日

さて。この地震でマンションはどの程度被害を受けたのか。
東京カンテイが調査している。

2017年7月31日東京カンテイ「熊本地震マンション被災度調査報告」
https://www.kantei.ne.jp/report/92kumamoto-survey.pdf

熊本市の分譲マンション全722棟のうち、倒壊1棟、大破5棟、中破46棟となっている。

震度6強地震があっても、マンションならば大体安心、といえるだろう。
ただ、中破以上の被害があるとその後の道のりは色々大変なようだ。

地震で重大な被害を受けたマンションは、所有者の8割以上の同意により解体が可能だ。なお、罹災証明書で「半壊」以上と認定された家屋は公費解体ができる。
公費解体を申請したマンションはどれだけあったのか。

2017年10月4日の締め切り日までに公費解体を申請した被災マンションは18棟だった。
おそらく、倒壊、大破のマンション6棟はすべて解体だろう。
「中破」のマンションは、修繕して住み続ける選択をしたのか、それとも解体に必要な8割以上の同意を集められなかったのか、どちらなのか気になるところだ。


★★★

熊本地震でただ1棟、倒壊したマンションがある。

第2京町台ハイツ(熊本市西区出町)1974年築、7階建て

1階の駐車場部分がつぶれている。どう見てもこれは解体するしかない。

しかし、所有者の8割の同意を得て解体を決定できたのが2016年末だという。
連絡の取れない所有者、家財道具の処分に同意しない所有者がいるなど、区分所有のマンションは解体にこぎつけるのもなかなか大変なようだ。

仮に解体にこぎつけられなかったら、危険な廃マンションが残存することになる。
「解体以外に選択肢がない」マンションについて、速やかに(自動的に)解体が決定、実行がされる仕組みも必要な気がする。

★★★

また、熊本地震では、全壊してなんと建て替えにまでこぎつけたマンションがある。

上熊本ハイツ(熊本市西区上熊本1丁目) 1980年分譲 5棟100戸 区分所有者数98名 

2016年4月 熊本地震発生
5棟の団地全体が全壊と判定される。

2017年9月 建て替えを決議。
2020年夏 1棟184戸(販売予定111戸)で竣工予定

これは。
条件に恵まれていた幸運もあろうが、快挙だろう。

しかし、地震で全壊してから再び我が家に入居するまで4年以上かかることになる。
なんと長い道程。


【参考】
2017年11月13日「熊本市の被災マンション解体難航 所有者間の合意できず」産経ニュース
https://www.sankei.com/region/news/171114/rgn1711140002-n1.html

2018年2月22日「被災マンション「上熊本ハイツ」建て替えへ…住民同士のつながり強く「組合」設立」産経ニュース
http://www.sankei.com/west/news/180222/wst1802220055-n1.html

2018年2月21日「熊本市の被災分譲マンションで初の建替え「上熊本ハイツ建替事業」が本格始動」旭化成プレスリリース
http://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2017/ho180221.html

2018年4月13日「2016年 熊本県熊本地方を震源とする地震に係る被害状況等について」
http://www.bousai.go.jp/updates/h280414jishin/pdf/h280414jishin_52.pdf