三笠の幌内神社

北海道、空知地方の幌内神社。

1880年創建。三笠市内の炭山祭りの本拠地。幌内炭鉱の守り神として、開鉱後、氏子組織とは別に炭鉱従業員が運営にかかわった。炭鉱最盛期には盛大な祭りが行われていた。1989年の幌内炭鉱閉山に伴い、現在は地域住民が運営する。
(出典:北海道新聞空知「炭鉱」取材班 編著「そらち炭鉱遺産散歩」)

廃墟は生ものだ。廃墟には旬があり、「今が一番美しい」という瞬間がある。
私は多分、幌内神社が廃墟として最も美しいときに立ち会った。
崩れかけた社殿。あと少し崩れたら無残な印象になってしまうというぎりぎりのライン。

写真は撮らなかった。
幌内神社社殿とその周辺には、写真を撮ることが憚られるようなある種の神聖さが漂っていた。
多分、いつ事故が起こっても不思議ではない炭鉱に働く労働者とその家族が、真剣に日々の無事を祈ってきた、その真摯な祈りの残滓が漂っていたのだろう。

私が幌内神社を訪れたのは2006年のこと。
あの社殿はなんども修復を繰り返していたようだが、さすがに今はもう崩れ去り、あとかたもなくなっているだろう。

木造の建物は、その役割を終えれば、ただ消え去るのみ。
あとはただ自然に還ってゆく。

桜を愛でるように、廃墟もまた、一瞬の美ととらえて惜しむのも一つの文化のあり方だろう。多くの廃墟にとって、無理に保存して無惨な骸をさらすより、朽ち果てていく方が自然であるべき姿のように私は思う。


「そらち 産業遺産と観光/幌内神社」
http://www.sorachi.pref.hokkaido.jp/so-tssak/html/parts/09horonaijinjya.html