日劇閉館。大バコ映画館の終焉

2018年2月4日に有楽町の日劇が閉館した。

今回閉館した「日劇」は、1984年にオープンした有楽町センタービル有楽町マリオン)内の映画館3館だ。

近年、あんなに駅近の超好立地にもかかわらず、「日劇は空いてる」「穴場」というイメージがあった。
どうせ観るなら新しい映画館の方が、スクリーンの迫力も座席の快適さも音質も、日劇より断然よかったりするので、みんなそちらに流れているのだろうか。と思っていた。

が、そもそも日劇はハコがとびぬけて大きかった。

1984年開業当時 → 2002年リニューアル
日本劇場 1,008席 → 946席
日劇東宝 708席 → 667席
日劇プラザ554席 → 523席

リニューアルを経ても大バコだ。

今、こんな大きなハコの映画館は多分ない。他より著しくハコが大きければ、それは空いている状態になりやすいのも道理だ。

ここ数年で開業した東宝の映画館の、もっとも大きなハコの座席数をみてみる。

TOHOシネマズ日本橋(2014年開業) 404席
TOHOシネマズ新宿(2015年開業) 499席
TOHOシネマズ上野(2017年開業) 333席
TOHOシネマズ日比谷(2018年開業) 489席
(2018年3月現在の車椅子席を除く座席数)

どこも500席以下だ。

観客として、色々な映画館を体験してわかったことは「ハコもスクリーンも大きければいいというものではない」ということだ。
ハコが大きくても、スクリーンが遠くて小さくみえてはがっかりだ。日劇は、ハコの大きさに比べてスクリーンが小さくみえた。

だからといって、スクリーンが大きすぎても疲れる。スクリーンがあまりに大きいと、特に前方席は耐えがく苦痛だ。

個人的に、新宿のテアトルタイムズスクエア(座席数340席。2002年開業で2009年閉館)は忘れられない。
べらぼうな大画面で、とにかく疲れた。

快適な映画鑑賞空間を意図して、様々な試行錯誤があった。
中には失敗もあっただろうが、様々な試みを蓄積して、映画館は飛躍的な進化を遂げている。

日劇1984年開館、2002年リニューアルで2018年2月閉館。

その寿命は30年と少し。
たった30年で日劇は映画館として時代遅れになってしまった。技術の進歩はすさまじい。

周囲のシネコンに比べて見劣りするというのもあるが、日劇の最大の致命傷は「大バコ過ぎる」ということだろう。

3スクリーン2136席だった日劇の後継として、2018年3月末にオープンする「TOHOシネマズ 日比谷」は13スクリーン2803席(車椅子席除く。また旧スカラ座、ミラノ座の2スクリーン約600席を含む)。うち5スクリーンが98席だ。

スクリーン数が多ければ多くの映画が上映できるし、客入りをみながら上映スクリーン数を調整することで経営リスクも低減できる。

日劇の閉館は当然すぎるほど当然なのだなぁとつくづく思う。