安藤忠雄の「光の教会」
新国立美術館の「安藤忠雄展」のなかでも目をひいたのは約7千万円の建設費をかけた「光の教会」の原寸大インスタレーションだ。
差し込む光による十字架はとても印象的で美しい。非常に魅力的な教会建築である。
光の教会の外観
しかしながら「光の教会」に関する安藤忠雄氏の解説には度肝を抜かれる。
「最初、資金が足りないというので、屋根なしでつくりましょうと提案した」(←大意)
とんでもない提案をする建築家もいたものだ。なんとか資金繰りがついて屋根付きになったというが、屋根なしの建物(教会)を提案する度胸というか感覚が信じられん。
「十字架のスリット窓にガラスは嵌めたくなかったのだが、協会側の強い意向でガラスを嵌めた」(←大意)
当たり前だ。ガラスなかったら雨、雪、寒風吹き込んで凍え死ぬわ。
「今回(のインスタは)、ガラスなしでつくったのですが、やっぱりガラスがない方がいいですね」
視覚的効果だけ考えたらそうやろな。
「いつかガラスはとったろ、と思ってます」
いやいや。教会が信者の集まる教会として使用されている以上無理やろ。教会として機能しなくなったら可能かもしらんが、それは教会にとって幸せなことではないだろう。
安藤忠雄氏と仕事をするのは大変だ。
使う人の使い勝手や快適性を一切無視する姿勢を私はよいとは思わない。
安藤忠雄氏は、彼の個性と建築の用途が嵌った時に傑作建築が生まれるかもしれない。
「見るべきもの」のある建築家かもしれないが、礼賛すべき建築家ではない、と私は思う。
建物は、用途の目的にそってつくられるべきものだ。
◆新国立美術館「安藤忠雄展―挑戦―」2017年9月27日〜12月18日
http://www.tadao-ando.com/exhibition2017/
・2017年9月26日「代表作「光の教会」、原寸大で再現 安藤忠雄さん展覧会」朝日新聞
約7千万円の建設費には入場料収入なども充てる予定だが、基本的に安藤さんの事務所で負担する。