糸魚川大火と火災保険

1976年の酒田の大火以来、実に40年ぶりの大火だった。

地震や戦争がない限り、もう日本で大火の起こることはないと思っていた。だから目を疑った。

2016年12月22日、糸魚川で大火発生。

朝10時20分頃出火し、鎮火したのは翌日16時30分である。
大火は、割と逃げる時間も逃げる経路もあるので、大抵の場合、人的被害は少なくて済む。
今回も1人の死者もなく鎮火したのは幸いだった。

とはいえ、町が、家々が炎にのまれていってしまうのは衝撃だ。

(写真出典:新潟日報 http://www.niigata-nippo.co.jp/feature/itoigawataika/photo.html

とにかく強風に煽られて火が広がっていく様子がよく分かる。


(写真出典:新潟日報 http://www.niigata-nippo.co.jp/feature/itoigawataika/photo.html

そして、強風に煽られた炎が通ったエリアの建物の多くは、跡形もなく焼けてしまっている。
古い木造家屋の多いエリアだったようだ。

焼損棟数147棟(全焼120棟、半焼5棟、部分焼22棟)

多くの人にとって、家は最大の経済的財産だ。
さて、これらの家々は火災保険をかけていたのだろうか。

火災保険証券件数 67件
支払い保険金額 1,175,176,000円

えっ。焼損棟数147棟に対し、保険証券件数67件。

これ、証券件数なので、一棟につき複数証券があるケースもあるだろう。
そこは割り切るとしても、火災保険加入率 45.6%。

いやいや。糸魚川のような地域なら、損保よりJAの方が利用されている可能性がある。
JA共済の「建物更生共済」。こちらにみな加入していたのかもしれない。
http://www.ja-kyosai.or.jp/okangae/product/home/

残念ながら、糸魚川大火の支払い状況について、JAの支払い状況は分からなかった。

燃えてしまった自宅が無保険だったケースはどのくらいあるのだろうか。

自動車には自動車保険をかけるのは常識、だが、住宅の無保険は割とある。

火災保険は生命保険より遥かに重要。

もっと火災保険加入もれのないような社会的な仕組みは必要ではないか、と思う。

現在は、銀行で住宅ローンを組む際に火災保険の加入が必須となっていることで火災保険加入が促進されている。

糸魚川での火災保険加入率が低かったのは、住宅ローンはとっくに払い終えた古い住宅が多い地域だったのかもしれない。

保険会社としては、そんなボロ家に保険はかけたくない。しかし、自治体などからすれば、火災保険に入っていなかったことで経済的に困窮する人が多く発生するのは、財政負担となる。


大火も起こることだし、自治体は、火災保険加入を推進するといいと思う。

幸い、現在、相当にボロ家であっても火災保険は引き受けしてくれる。利用しない手はない。

【2018年9月追記】

最終的に、というか2017年3月末時点での火災保険の支払は下記の通りだった。



火災保険証券件数 127件
支払い保険金額 1,261,140,000円

http://www.sonpo.or.jp/news/statistics/disaster/weather/pdf/2016_w02.pdf

よって火災保険の加入率はざっくり83%ほどだったことになる。
この中に銀行の支店も複数含まれていることを考えると、住宅に対する平均支払保険金額は「分からない」。住宅再建に十分な保険金が支払われた世帯はどのくらいあったのだろうか。また、無保険だった住宅は何棟あったのだろうか。

【2018年9月追記2】

全労済FACT BOOK(2017年版)」に糸魚川大火の記載を発見した。

糸魚川大火 共済金等お支払い金額 7億円

全労済に問い合わせたところ、すべて火災共済の支払額であり、支払い件数は34件だそうだ。

つまり1件あたり平均約2000万円の支払い。

全労済は都市労働者をターゲットとした保険事業者だと思っていたので、糸魚川の被害エリアでこれほど全労済の火災共済が利用されていたとはまったく想定外で驚いた。そして保険金額からみてもしっかり加入している。

なお、損保協会とりまとめには全労済の支払い件数、支払額は含まれていない。

焼損棟数147棟に対して支払い件数は161件(火災保険127件、全労済34件)。加入率、軽く100%越え。

それでも被災者の中には無保険住宅もあったという報道があったことを考えると、火災保険の重複契約ぶりはなかなか凄い。



【参考】
2017年1月20日 消防庁「新潟県糸魚川市大規模火災(第13報)」
損害保険協会
http://www.sonpo.or.jp/news/information/2017/1612_09.html

【関連エントリ】
2017年9月24日「糸魚川大火のあとに」
http://d.hatena.ne.jp/falken1880/20170924#p1
2017年9月28日「糸魚川大火の来し方」
http://d.hatena.ne.jp/falken1880/20170928#p1