配偶者による暴力の今

昭和の時代、夫婦間の暴力は、あまりにありふれたものだった。
社会的に公認されたものだった、と言っていいかもしれない。

「妻を殴る権利が、夫である自分にはある」と本気で思っている男性は珍しくなかったし、妻が「殺されるかも」という恐怖を感じて、警察に駆け込んでも、大抵は「夫婦間のこと」として取り合われなかった。

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ある昭和的老夫婦の風景

しかしながら、「DV」という言葉が誰もが知る言葉となり、ついに2008年、配偶者暴力防止法が施行された。

また、女性から男性への暴力もあるということが一般に認知されるようになった。

さて、現在、配偶者による暴力はどんな状況なのだろうか。

2016年4月19日「ストーカー事案・配偶者からの暴力事案等の対応状況」を見てみる。
http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/siryo/pdf/bo81-2.pdf

相談の受理件数はうなぎのぼりだ。2015年には年間5万件を超えている。

その理由は簡単に推測できる。

1.昔は受理されなかった案件(門前払いをくらった案件)が受理されている。
2.配偶者による暴力は警察に相談すべきとの認識が社会に浸透した。

というわけで、相談受理件数の激増ぶりは、まったく驚きではないのだが、次の表は目をひいた。

刑法犯・特別法犯としての検挙件数が2012年に激増している。

2011年 2,424件
2012年 4,103件

警察内で何があった。対応指針かなにかに変更があったのだろうか。

いずれにしても、ようやっと「配偶者間でも暴力はダメ」ということが社会常識になってきて、相談件数も検挙件数も、しばらくは増加し続けるだろう。

個人的体感としては、夫婦間の暴力は激減している気がする。
身近で配偶者に暴力をふるわれた(またはそれを目撃した)という話を聞く頻度はどう考えても減っている。

統計の数字(把握された暴力件数)と実態(実際の暴力件数)との乖離。

「警察に行くべき問題だ」と認識されるか否かが変わってきた、と。