モディリアーニ
こんな物語はどうだろう。
舞台はパリ、モンパルナス。
病弱で、放蕩者の画家。
美しい女たちとの数々の恋愛を繰り返し、酔いどれる日々。
ある日、画家は19歳の美しい画学生と恋に落ちる。
彼女の家族の強い反対も押し切り、2人はともに暮らしはじめる。しかし、出会いから3年、画家は貧困のうちに死んでしまう。
そして、画家の妻も、画家の死の2日後、後を追って自殺してしまう。アパートから飛び降りた時、彼女は妊娠していた。
★★★
「どんなメロドラマだよ」と思うが、これ、実話である。
モディリアーニと妻ジャンヌの物語である。
この実話系メロドラマ、過去2度、映画化されている。
ずば抜けて有名なのは、1958年の『モンパルナスの灯』だ。
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ジェラール・フィリップとアヌーク・エーメの美男美女ぶりと映画らしい映像美は、確かに素晴らしい。
貧困設定なのに、髪のセットも乱れない美貌のキープぶりってどうなのよ、とか思うが、50年代の映画はリアリズムよりエレガントな美しさが優先なのだろう。
それはともかく、個人的には、わりと物語に同調できなかったりする。
まず、「モディリアーニの絵は、彼が死んだら買うたるわ」みたいな、ハイエナみたいな画商を悪役っぽく登場させているが、現実的には「アル中ヤク中で、まともな話のできない男とビジネスはできん。死んだらトラブルリスクがなくなるので奴の絵を扱ってもいいが」というのは極めてまっとうな判断だと思う。
映画中で、アメリカの富豪に絵を売りに行って「化粧品の商標に使いたい」と言われてモディリアーニが激怒して商談をぶち壊すシーンについては、「お前なんぞ野垂れ死にしやがれ」としか思えない。これは実際のエピソードではないのだろうが、こういう芸術家きどりの態度だったのなら、貧困は当然でしかない。
大体、例えば、デュフィやミュシャの商業的仕事の方が、多くの人々の生活の中に美と心地よい時間を提供したわけで、それはモディリアーニの絵なんぞより価値ある仕事だったと私は思っている。
ちなみに、モディリアーニは、2004年にも映画化されている。
こちらの『モディリアーニ』は、多くの有名画家が登場するものの、「その解釈、同意できない」「その描写、異議あり」というシーンや台詞のオンパレードだし、ことに、とある画家の描写がその画家に対する敬意が感じられず、更に演じる役者に言わせた台詞が、「史実的に絶対ありえないわ」という激怒ものの酷さだった。
が、この映画、ジャンヌを演じた女優の美貌が、モディリアーニの絵にとてもよく似ていて、見ごたえがある。現存する実際のジャンヌの写真より、この映画のジャンヌの方がモディリアーニの絵のジャンヌに似ている。
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モディリアーニの絵は、死後高い評価を得た。
しかし、ひっそりと、モディリアーニの絵は、彼とジャンヌの劇的なメロドラマによって評価が底上げされてるだろうと思っている。