SMAP解散が示唆するもの

2016年1月13日、SMAP解散のスクープ記事がスポーツ紙に掲載された。

この時点では、多くの人々が「あんなに人気グループが解散なんて、なんで?もったいない」「あのSMAPが解散なんて残念すぎる」と思っていた。

2016年1月18日、『SMAP×SMAP』冒頭で、異様な雰囲気の中で行われるSMAP5人の謝罪という、あまりに無残で異様な映像が放映され、認識は急変する。

報道によれば、本当は、SMAPは、1月12日に退社したチーフマネージャーとともにジャニーズ事務所を退所する予定だったという。しかし、木村拓哉氏がジャニーズ事務所に残留することを選択した。

事務所が違って同じグループで活動するのは困難だ。普通に考えて、これは解散するしかない状況だ。
にもかかわらず、である。
謝罪会見の異様さをピックアップしよう。

草磲剛氏の「今回、ジャニーさんに謝る機会を木村君がつくってくれて、今、僕らはここに立ててます」という言葉の異様。

・リーダーである中居正広氏が端に追いやられ、木村拓哉氏が真ん中で進行している異様。

この「国民的人気を誇るトップタレント達が、ジャニーズ事務所の権力者たちに屈する有り様を公衆の面前にさらす、屈辱的映像」は「公開処刑」と評された。
言いえて妙だ。
こんなあからさまなパワーハラスメントの現場、果たして放映することが適切なのか、私ははなはだ疑問だ。

★★★

この謝罪会見に関連して、約1年前の一つの記事が取り沙汰された。

2015年1月29日号の『週刊文春』に掲載された、ジャニーズ事務所の副社長であるメリー喜多川氏へのインタビュー記事である。

かなり唖然とする内容である。

1.メリー副社長のSMAPへの不当に低い評価と侮辱発言

記者の前で、SMAPについて「だって踊れないじゃない?」と言い放つ。
続けて、「そこ(注:青山劇場)にも踊れる子しか出られませんよ。うちの子たちには芝居やってる子だとか、面白いことをやっている人とかいろいろいるけど。(舞台では)踊りが全部できる子という風になっているんです。」
「悪いけど私、飯島(注:SMAPチーフマネージャー)に踊りの踊れる子を預けられないもの。そういうこと、わかんない? うちの子はある程度踊らなきゃしょうがないでしょう」

SMAP、舞台でめっちゃ踊ってるのに。

SMAPが「踊れない」という見解に私は同意しない。むしろ、「踊れりゃいいってもんじゃない(問題は表現力だ)」と思っている。
が、しかし、SMAPが「踊れない」という見解も、ありはありだ。

百歩譲って、「SMAPは踊れない」という見解はありとしても、雑誌記者のいるところで、こうも侮辱的に言い放つか? ジャニーズ事務所の副社長がする発言ではない。

2.「事務所のトップは近藤真彦」という異様な認識の強要

(メリー氏)「SMAPが一番トップじゃないんです」

いや、どうみてもSMAPがトップだろう。
今、SMAPより勢いのあるグループ、話題をさらっているグループはいても、仕事量、知名度、築き上げた実績、どうみてもSMAPが堂々たるトップだ。

「うちのトップはマッチです。SMAPじゃありません。」

は?

近藤真彦氏は、確かに、かつてトップアイドルだった時期はある。しかし、そんなの記憶の彼方の大昔の話だ。しかも、近藤氏は途中でレースに転向し、実質、芸能活動から降りている。
大した舞台技術もなく、それこそ「踊れない」。総括すれば、残念な二流芸人でしかない。

ただ、この記事で、2015年大晦日の紅白の時に「え?紅白の大トリにふさわしいのはSMAPしかいないのに、なんで近藤真彦なんていう過去の遺物が大トリなの?」という戸惑いに対する解答は得た。

もちろん、出演者決定の責任はNHKにあるわけで、この件で責められるべきは、こんなロクでもない過去の遺物を大トリとして認めてしまうNHKだが。

それにしても、

SMAPジャニーズ事務所にもたらしている収入額」
近藤真彦ジャニーズ事務所にもたらしている収入額」

メリー副社長はきっちり数字を知ってるはずだ。それでこの物言い。
唖然として言葉も出ない。

3.「世襲が当然」という時代錯誤
「私の娘(ジュリー氏)が(会社を)継いで何がおかしいの?」
「うちの娘と飯島が争うなら私は飯島に『出ていけ』と言うしかない。だって、飯島は私の子供じゃないんだもの」

すごい感覚だな、おい。
ジャニーズ事務所は、それなりに規模の大きな会社組織だろうに。
「企業は社会の公器」という意識が片鱗もない。

ぜひ、ジャニーズ事務所の財務諸表をみてみたい。
トップがこんな感覚なのだ。賭けてもいいが、相当に驚愕の支出があるだろう。

4.SMAPチーフマネージャーの飯島氏への公然たる侮辱、パワハラ
インタビュー途中、飯島氏を呼びつける。
飯島氏の前で「SMAPは踊れないじゃない」と言い放つ。「飯島に踊りを踊れる子を預けられないもの」と侮蔑する。「トップは近藤真彦」というのも、普通に納得できないだろう。
そして面と向かって、「飯島は辞めさせます」「SMAPと出ていけばいい」とこれだけはっきり言われたのだ。

…これ、飯島氏とSMAPは、「ジャニーズを退所するしかない」と判断して当然の状況としか思えない。

このインタビューから1年、1番のハッピーシナリオは、SMAPチーフマネージャーとともにジャニーズ事務所を退所し、SMAPとして活躍しつづけることだっただろう。

でも、木村拓哉氏がジャニーズ事務所残留を希望し、4人が退所を希望した以上、このシナリオは消えた。
1月以降のハッピーシナリオは、SMAPは解散し、できるだけ円滑に4人がジャニーズ事務所を退所し、それぞれに活躍することだろう。将来的に、臨時的なSMAP再結成があったらいい。

解散の時系列を整理しよう。

2016年1月12日 SMAPチーフマネージャー飯島氏退社

SMAPは、視聴者やファンから見えるのは5人でも、チームとしてみた場合、飯島氏もSMAPというチームの重要な1人だっただろう。
事実上、飯島氏の退社日が、SMAPの一つの終焉だっただろう。

2016年1月18日 SMAP謝罪会見 

視聴者(私)からみて、この日が「SMAPが終焉した日」だ。

2016年8月14日 同年12月31日でSMAPが解散することを発表。

「ようやっと解散発表か」というのが偽らざる感想だ。
そして「どうか解散後、4人が無事、ジャニーズ事務所を退所でき、つつがなく今後も活躍できるように」と願った。


さて、気になる点がいくつかある。

・1月のチーフマネージャー退社以降、SMAPは、事務所から十分なマネージメントサービスを受けているのか。

SMAPジャニーズ事務所の契約内容は、適正なのか(タレント側が不当に不利となっていないか)。

・今後、ジャニーズ事務所が、飯田氏やSMAPメンバーの活動を不当に制限することがないか。


どうもSMAPのメンバーの扱いが、人権の見地から容認できない状態にあるのではないか、という疑いがぬぐえない。

<関連エントリ>
2016年8月23日「SMAPに関する記憶」
http://d.hatena.ne.jp/falken1880/20160823
2016年8月30日「ジャニーズ事務所、この許されざる者
http://d.hatena.ne.jp/falken1880/20160830