新潟日報がずれてる件

2011年11月、新潟日報の部長が、匿名で、聞くに耐えない差別的暴言、さらには「死ね」「自殺させるのが当面の希望」「身元を洗う」等の脅迫を行っていた、というスキャンダルが発覚した。

発覚の契機は、新潟日報部長が、高島章弁護士にからんで氏に実名を特定され、謝罪要求をされたことだ。

高島弁護士が新潟日報にコンタクトをとってからの同社の対応は早かった。

11月25日付で部長を懲戒休職(無給・無期限)。

無期限となっているが、懲戒休職は一般に3か月程度が限度だ。新潟日報は3か月後にどのように当該部長を処遇しているか、注目したいところだ。

で、この事件を報じた新潟日報の記事がつっこみどころ満載…、否、疑問、違和感あふれるものだったので、ここに新潟日報の対応と記事の問題点を2つ指摘する。

その1.記事から、部長のどういう「暴言」がどのように「アウト」だったのか解からない。
新潟日報の記事を引用する。

 高島氏は新潟水俣病第3次訴訟の原告側弁護団長。25日までの調査では、ツイッターで坂本部長は11月20日に「はよ、弁護士の仕事やめろ」「こんな弁護士が新潟水俣病3次訴訟の主力ってほんとかよ」などと高島氏を中傷する内容を匿名で書き込んだ。

 23日に投稿主が坂本部長ではないかとの指摘がネット上であったのを受け、同日、高島氏が坂本部長に確認したところ、投稿を認めた。坂本部長は24日に高島氏の事務所に出向き、「仕事のストレスなどがあり、酒を飲んで無礼な表現を重ねてしまった。誠に申し訳ありませんでした」と謝罪した。高島氏はこれを受け入れた。
新潟日報 2015年11月25日)

ポイント1)新潟水俣病、全然関係ないから。

この記事だけ読んだら、「新潟水俣病に関して、なんらか意味ある議論をしているうちにエキサイトしてしまって暴言にいたった」という状況なのかな。と思ってしまう。
この件について、新潟水俣病はまったく関係ない。「高島氏は新潟水俣病第3次訴訟の原告側弁護団長。」の一文は、故意の読者のミスリードを誘っているのではないか。

ポイント2)引用されている「暴言」が違う。

「はよ、弁護士の仕事やめろ」「こんな弁護士が新潟水俣病3次訴訟の主力ってほんとかよ」。
もしも、高島弁護士がよほどのトンデモ発言をしたのなら、はっきり言って、これは「あり」の範囲の暴言だと私は思う。
実際は、高島弁護士は、極めて常識的な発言しかしていないところへの「からみ」であり、まったくのところ「なし」な文脈での発言だったが。しかし、この程度の発言で、謝罪はあっても懲戒はない。

普通、読者は引用されている発言が懲戒となった原因となる暴言だと思う。「これが懲戒になるくらい問題の暴言」とすれば、「こわい、こわい。モノ言えば、唇寒しだ」と思ってしまう。
実際の暴言は「良識ある市民なら絶対言わないし、聞いたら絶句するような、差別に満ちた下品な発言」だし、「死ね」だの「自殺させるのが当面の希望」だの「身元をあらう」だの、犯罪教唆や脅迫レベルの内容だった。

もっとも、翌々日、27日の新潟日報には、「13年ごろからツイッター上での論争の中などで、人権侵害や差別につながるような内容を、著しく品位を欠いた表現で繰り返し投稿していた」と掲載されているので、全く実情を報道していないというわけではない。


ポイント3)部長の無意味言い訳掲載は不要

「仕事のストレスなどがあり、酒を飲んで無礼な表現を重ねてしまった。」って、なんの言い訳にもなってない無意味な部長の言い訳を掲載するのはどうなのか。これまた、「ちょっと気が緩んで口がすべった程度の暴言」というミスリードを招く。
大体、「仕事のストレス」など、言い訳として無意味すぎなので掲載は不適切。また、酒のせいにするのも「暴行や名誉棄損や痴漢などの犯罪行為を行っても、酒をのんでいることが免罪符になる(かもしれない)」ような印象を与えるので不適切だ。
そもそも、部長の暴言は、長期にわたり、かつ、様々な時間帯に行われているので、暴言投稿時に常に酔ってたとしたら、仕事もままならないアルコール依存症患者だ。こんな嘘なのが分かりきっている言い訳を掲載するのはいかがなものか。

2.新潟日報、社員のSMS利用への不適切な干渉宣言

なんと、新潟日報では、「個人としての投稿でも会社への届け出を求めていた」そうだ。
これは驚く。それは不適切なプライベートへの干渉だろう。

趣味の仲間内での投稿を楽しみたい社員もいるだろう。例えば、サッカーが趣味で、仲間内で、「うおおお、やった!」「ナイスゴール!」「すげー。キタ―!!」とかいう投稿をしているのを会社に知らせるとか、普通に違和感がある。なんでプライベートの顔を会社にさらさなくてはならないのか。

大体、趣味を会社に開示する義務はなかろう。プライベートへの不当な干渉だ。
反社会的でない限り、どんな趣味でも個人の自由だし、「その趣味は世間、社内受けが悪い」と本人が判断して、「あえて開示はしない」自由もあるはずだ。

まぁ、記者などなら、実名と社名を明らかにしてSNSをやる人も多いだろう。新潟日報の看板を明示するアカウントなら会社への届け出も妥当かもしれない。
でも、届け出てさせて、会社としてどうするのだろう?アカウントの常時監視など不可能だ。仮に、あるアカウントが暴走をはじめても、会社が即座に止めることなどできるのだろうか。
なお、言うまでもないが、新潟日報の記者であることを明示したからといって、その記者個人の見解は社としての見解とは別だ。
例えば、ある事象について、新潟日報の紙面に載った見解、意見と違う見解、意見を発信しても別に問題ない。
いろんな見解が「あり」で、それぞれの見解が決して間違っているわけではないこと、というのは世の中に山のようにある。
「会社は、従業員個人が意見を持つことを禁止していない」はずだが、一体、どのような発言を規制するつもりなのか、新潟日報のそこらへんの認識も確認したいところだ。

今後、「SNSの運用基準や指導体制をさらに強化して研修を開催する」そうだが、どんな運用基準と研修なのか。新潟日報はせっかくなのでぜひ公開して欲しい。

【参考】
・2015年11月25日 新潟日報上越支社報道部長が中傷書き込み」
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20151125219689.html

上越支社報道部長が中傷書き込み

 新潟日報社は、インターネットの投稿サイト「ツイッター」上で新潟市の弁護士高島章氏を中傷する書き込みをしたとして、上越支社の坂本秀樹報道部長(53)を25日付で同支社報道部長の職を解き、経営管理本部付とする人事を決めた。

 新潟日報社は、ツイッターでの書き込みの内容や経緯などについてさらに詳しく調査を進めている。過去の書き込みなどについても調べた上で、一両日中にも社としての対応を決定し、公表する。

 高島氏は新潟水俣病第3次訴訟の原告側弁護団長。25日までの調査では、ツイッターで坂本部長は11月20日に「はよ、弁護士の仕事やめろ」「こんな弁護士が新潟水俣病3次訴訟の主力ってほんとかよ」などと高島氏を中傷する内容を匿名で書き込んだ。

 23日に投稿主が坂本部長ではないかとの指摘がネット上であったのを受け、同日、高島氏が坂本部長に確認したところ、投稿を認めた。坂本部長は24日に高島氏の事務所に出向き、「仕事のストレスなどがあり、酒を飲んで無礼な表現を重ねてしまった。誠に申し訳ありませんでした」と謝罪した。高島氏はこれを受け入れた。


・2015年11月27日 新潟日報「元部長、無期限懲戒休職に」
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20151127219941.html

元部長、無期限懲戒休職に

 新潟日報社は26日、インターネットの投稿サイト「ツイッター」上で新潟市の弁護士高島章氏を中傷するなどの書き込みをした坂本秀樹元上越支社報道部長(53)=25日付で同部長職を解き経営管理本部付=を懲戒休職(無給・無期限)処分とした。

 新潟日報社は元部長の書き込みについて、過去のものも含めて内容や経緯などを詳しく調査してきた。

 調査結果では、元部長は2011(平成23)年3月ごろから社に届け出ることなく匿名で投稿を始めた。13年ごろからツイッター上での論争の中などで、人権侵害や差別につながるような内容を、著しく品位を欠いた表現で繰り返し投稿していた。

 高島氏に対しては今年11月20日に「はよ、弁護士の仕事やめろ」「こんな弁護士が新潟水俣病3次訴訟の主力ってほんとかよ」などと暴言、中傷する内容を書き込んだ。

 調査では、元部長に対して聞き取りを行い、個々の書き込みについて本人が投稿したものかどうかなどを厳正に確認した。その結果、不適切な内容、表現の書き込みの大半を「自ら行った」と認めたため、新聞人としてあってはならない行為である上に報道部長という役職だったことを考慮して厳重処分とした。

 聴取に対し元部長は「仕事のストレスなどがあり、酒を飲みながら投稿してしまった」と話している。

 桑山稔・取締役経営管理本部長の話 極めて不適切な行為であり、不快な思いをされた関係者の皆さまに深くおわび申し上げます。新潟日報社ではインターネット上への書き込みに当たっては、個人としての投稿などの場合でも会社への届け出を求め、品位を欠く書き込みを禁止する社内規定を設けて指導してきました。今後は会員制交流サイト(SNS)などの運用基準や指導体制をさらに強化するとともに、全社員を対象とした研修を早急に開催するなどして社員教育を徹底します。