あの戦争の映画たち
日本で戦争と言えば、1945年8月15日に終わったあの戦争だ。
「太平洋戦争」というと1941年開始になってしまうので、「あの戦争」と呼ぶことにする。
毎年8月、池袋の新文芸坐では「あの戦争の映画」が特集される。
結構、「あの戦争の映画」を観たな、という気がする。折角なので、ここに「あの戦争の映画」の名作、傑作をまとめてみる。
【必見!の傑作、名作】
◆小林正樹監督「東京裁判」(1983年/227分)
アメリカの国防総省が撮影・収録していた「東京裁判」の映像をもとに、戦中の報道フィルムを使って時系列で整理して解説もつけて作成されたドキュメンタリー。小林監督の編集力が素晴らしい。
とにかく「あの戦争の時代」のスター達がそろい踏み。観なければ大損。
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◆岡本喜八監督「日本のいちばん長い日」(1967年/157分)
◆原田眞人監督「日本のいちばん長い日」(2015年/136分)
この作品を知るまでは、「なんでもっと早く終戦できなかったのか」と思っていたが、この映画を観て「8月15日で終戦できたのは本当に幸いだった」と考えが変わった。
終戦阻止のための宮城事件なんていうクーデター未遂事件あり。陸軍の暴走ぶりに驚く。終戦に至るまで、どれだけサスペンス。まったく一筋縄では行かなかったことが解かる。
そして、終戦(敗戦)へ至るイニシアティブをとったのは明らかに昭和天皇。昭和天皇は偉大だと私は思う。
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◆深作欣二監督「軍旗はためく下に」(1972年/97分)
語られているのは、ニューギニア戦線での実情。餓死者累々の現場。人肉食さえある。
上官の無能(学歴によって階級が決まるため、学徒動員のシロウトが、経験豊富で実力ある「軍曹」の上官になるので、これは軍の構造的問題)。実力のない上官(少尉)による部隊に対する暴力支配と虐待(これもよくあったこと)。
少佐命令による残酷な俘虜殺害。しかし、戦後、悠々自適の生活を送る元少佐に問いただすと「少尉が勝手にやったこと」と突き放す。
終戦の連絡が来て、師団本部から集合命令が出ているのに、突撃命令を出す狂った少尉を、正当防衛で殺した軍曹以下3名は死刑。
むちゃくちゃ。
戦後、社会復帰できずに朝鮮人部落に住む元上等兵と、戦後のバクダンで盲目となり、更に自殺のような形で死ぬ元憲兵。精神的外傷の大きさが痛ましい。
何人もの男の人生を破壊しても、戦後、要職について裕福に暮らし、小指の先ほどの罪の意識も持たぬ元少尉。いるよね、こういう人。
フィクションかドキュメンタリーかは、「事実」を語る手段に過ぎぬ。これは「あの戦争」の映画の金字塔。映画作品としても本当に見事。
ただし、最後の「国が勝手におっぱじめた戦争」という台詞は異議あり。「多くの国民の皆さまが心から支持し、熱狂した戦争」が正しい。
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「二等兵が、上官命令で俘虜を殺害しようとしたが、結局、腕を傷つけただけ」で戦犯として死刑となる設定は、いくらなんでも無理があって「ないわー」と思う。もう少し、実際にあった事例をベースにした設定でいいと思うのだが。主人公が「確かに酷いことをした」設定の方がよかったとは思う。
しかし、戦争で職務を果たしただけ、上官命令を実行しただけ、あるいは、酷い行為をした日本兵がいたのは確かだが、明らかにただの人違いで戦犯として死刑になった人々がいるのは事実だ。
田舎の床屋、という設定のフランキー堺がとてもいい。
そして「こういう理不尽、ある」という共感が、そして、理不尽に押しつぶされる無力な人間の悲痛さが、組織に働くすべての人の琴線に触れるのだ。
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◆市川崑監督「野火」(1959年/105分)
◆塚本 晋也監督「野火」(2014年/87分)
フィリピンのレイテ島。病院も受け入れ拒否、所属部隊も受け入れ拒否。飢えの中、島をさまよう兵隊。何しろ、レイテ島と言えば、補給なくして戦いに突入した挙句、戦い終了後は兵士置き去りというトンデモな有様だった地だ。レイテでは約8万人の兵士が死んだ。生存率は約3%。飢えの中、どんな異常な世界がそこにあったのか。
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◆クリント・イーストウッド監督「父親たちの星条旗」(2006年/131分)
◆クリント・イーストウッド監督「硫黄島からの手紙」(2006年/141分)
硫黄島の戦いを、日米双方の視点から描く。
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◆堀川弘通監督「激動の昭和史 軍閥」(1970年)
◆岡本喜八監督「激動の昭和史 沖縄決戦」(1971年)
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【ちょっとマニアック編】
◆「軍艦武蔵」(1992年/135分)
「不沈艦」と言われた巨大軍艦、武蔵。すでに戦争の主役は航空機になっているのに、巨大軍艦。案の定、なんの戦果も挙げないうちに、なぶり殺しのような形であっという間に沈んだわけだが、この「軍艦武蔵」の元乗組員や関係者27名へのインタビューで創り上げたドキュメンタリー。
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★★★
これは観なければ、と思っている映画。
来年、新文芸坐でかけてくれたらありがたいのだが。
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