知覧武家屋敷群のもったいなさ

知覧の武家屋敷群は、1981年(昭和56年)に国の重要伝統的建物群保存地区となっている。

知覧武家屋敷庭園有限責任事業組合のホームページに四季折々の写真がある。
http://chiranbukeyashiki.com/

美しい。確かに美しい。保存地区にしたくなる。

観光客は、入園料500円を払って約700mの道に沿って7つの庭園を見て歩く。

庭園は見事。

土砂降りとか写真のつたなさとかはとりあえず気にしない。問題はそこじゃない。

庭園に相対する建物はこれ。

おい。

建物は放置プレイかい。
そもそも、「立ったまま庭を鑑賞させる」とか、ダメダメである。

恐らく、庭師は、家の主や客が座敷に座った時に最も美しく見えるよう庭を造っているはずだ。庭を鑑賞する最適視点は、建物内にあるはずである。

だったら建物も機能させなければ。
観光客にせっかくの庭園をきっちり堪能させる体制がないのはいかがなものか。


そのためには建物をリフォームして再生してもいいし、いっそのこと取り壊して、現在の技術で、庭園にあわせたハイセンスな木造建物を新築したっていい。

「保存すればいい」というものではない。
むしろ使わないのだったら保存しなくてもよい。保存よりも「最適なかたち」を追求すべきだ。

もう一つの問題点。現状では、基本、知覧武家屋敷群の観光客は入園料の500円しかお金を落とさない。
というか落とせない。

一応、一軒、「高城庵」という武家屋敷を利用した郷土料理の店があるが、ほぼこれだけだ。
http://tiran.kashoren.or.jp/kaiin/takiann/

これは勿体ない。勿体なすぎる。


知覧武家屋敷群、直島の家プロジェクトのように、庭園とコラボした美術作品にしてもいい。
また、庭園が最適視点で堪能できるよう配慮したレストランやカフェを建ててもいい。
住友林業あたりとコラボできないだろうか。

知覧、あまり「保存」にこだわるとむしろ勿体ない。
せっかくならば、今ある庭園や風景を活かしつつも、更に進化させて快適な観光地になるといい。

ちなみに、これだけの庭園は個人宅で維持するのは経済的にもかなり無理がある。
また、維持を強制されるのもつらいものがあろう。大体、観光地となっては住宅地として快適ではない。
もうここは観光地と割り切って整備していくしかなかろう。

知覧武家屋敷群、世界、はともかく、日本各地およびアジア各地から訪れる価値ある観光地くらいは目指せるだろうに、と思う。