あるキャリア官僚の覚悟
昔、とあるキャリア官僚の方と雑談していたときの話である。
「私は大型免許(←うろ覚え)を持ってるんで、大型トラックとかも運転できるんですよ」
「なんでそんな免許をお取りになったんですか?!」
「万一の時、今の仕事を辞めても家族を養えるようにですね…」
東大卒、国家公務員Ⅰ種のキャリア官僚という、ちょっと前の日本的には「これ以上はない恵まれた安泰な立場」にある方の台詞である。意表をつかれた。
色々な方面に高い関心をお持ちの、大変博識な方だったので、本当のところは、酔狂で勉強のために取られたのだろうが、その覚悟の持ち方が素敵だと思った。
組織に属していれば、良心に反する仕事をしなければいけない羽目に陥ることがあるかもしれない。
それは巡りあわせで「そんな立場にならない」と言い切ることはできない。
その時に「嫌だから辞める」ということが出来なかったら凄く苦しい。
辞めるというオプションの確保をしたい。
または異議申し立てが辞めることにつながるかもしれない、そのリスクをとる覚悟の担保が欲しい。
実は官僚というのはつぶしのきかない職業だ、と聞いたこともある。いざというときのために「大型免許をとっておく」というのもなるほど分かる気もする。
この方はきっと自分の基準と覚悟を持って生きている方だったのではないか、と思う。そしてそれはえらくかっこいいと思うのだ。