公的年金制度は国民年金だけでいい
現行の公的年金制度、問題山積なのは誰もが認めるところだ。
では公的年金制度はどうあるべきか。私の提案はこれだ。
「公的年金は国民年金だけでいい!」(厚生年金保険・共済年金などは廃止)
理由は以下の通りである。
1.制度はシンプルが一番
国民年金に厚生年金に厚生年金基金に共済年金。1階部分、2階部分、代行部分に3階部分。そして1号、2号、3号保険者。はっきり言って、現在の公的年金制度は頭が痛くなるくらい複雑である。
日本の年金制度のあらまし(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei01/index.html
これだけ複雑な制度の運用で間違いが起こらないわけがない。
公的年金にかかわる仕事をしている人であっても、完璧に年金制度を理解しているということはないだろう。というか「なるほど、こういう制度なのか」といったん理解しても、失念したり勘違いしたりは当たり前に起こり得る。その結果、間違った案内や手続きをしてしまうことになる。また、仮に年金業務従事者全員が超人級に制度と業務に精通していたとしても、これだけ複雑な制度の運用に、漏れや間違いが起こらないはずはない。
間違いを起こさないよう、システムに磨きをかけるとか、職員の研修を充実させるとか、業務フローを見直してチェック機能を強化するとか、それはコストと労力のかけ方を間違っている。それより年金制度をシンプルにすればすむ話だ。
大体、すべての国民を対象とする制度であるにもかかわらず、ほとんどの国民が理解できてない。
対象者が理解できていなければ、間違いなどがあっても分からないので指摘できない。利用者の確認、検証が不能ならば、それは間違いが多発にして当たり前だろう。
2.公的年金は1人あたり約7万円〜8万円程度で十分
公的年金制度はどの程度の金額を給付すべきか。
生活保護との比較で「国民年金の給付水準は低すぎる」という意見があるが、それはナンセンスだ。
生活保護は「丸裸の人に与える着物」。当然、住居もない人(最底辺弱者)を対象とした制度である。住居がなければ賃貸が必要となる。生活するうえで最も大きな負担は家賃だ。
対して年金受給者は、原則として今まで築いた資産を持つ人たちだ。実際、現在、高齢者の持ち家率は高い。65歳以上の世帯主の約8割が持ち家だ。
(出典:総務省統計局「日本の住宅・土地—平成20年住宅・土地統計調査の解説」
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2008/pdf/kgiy03.pdf)
賃貸か持ち家かで必要な生活費は変わる。
持家であれば家賃は発生しないことだけ考えても、公的年金が担保すべき年金受給者の生活費が低いのは当たり前のことだ。
「持家に住み、図書館と公園が近くにあり、読書と散歩とゲートボールが趣味の生活」をイメージしてみよう。
月7万円(夫婦で月14万円)は生活のベースとなる金額として十分ではないか。
趣味や道楽などを含めた生活費すべてを公的保障(国が保障する制度)で賄う必要などない。上乗せは民間の年金商品を利用すべきだ。
もちろん、国民の自助努力に対し税制優遇はあっていい。
3.年金制度は個人単位で構築すべき
家単位、世帯主たる中高年男性中心目線で制度構成された厚生年金制度は、思想的にも昭和というより戦前の遺物。
4.繰り下げ受給奨励をすれば適切な年金制度運用の一助となる。
年金は、死亡リスクならぬ長生きリスクに対応する制度である。老齢により職業能力も健康状態や体力も劣化する。
その時にみじめな状態に陥るのは嫌だという恐怖が皆にあるから年金制度がある。
年金制度は、能力が劣化した弱者としての老人のためにある。まだまだ稼働能力があり、充分な収入を確保している高齢者が年金を受給しているのは確かに不適切だ。
とはいえ、普通の人は受給資格のあるものをお断りするような聖人君子ではない。普通の人が聖人君子でないからといって非難するのはお門違いだ。
問題は仕組みづくりだ。
収入や資産があり、年金が必要ないうちは受給しないメリットをつくることが必要だ。
それは「年金受給年齢を先送りにすれば年金額が増える」という制度とその喧伝である程度達せられるだろう。
現在、老齢基礎年金を繰下げ受給をして70歳から受給すれば1か月あたり約9万3000円だ。
老齢基礎年金の繰下げ受給(日本年金機構)
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=5540
★★★
中高年が既得権益にしがみつくのさえ辞めれば、問題解決策は案外シンプルなのではないか。