サンソン・フランソワのノクターン

ショパンノクターンならば、私は1番が最も好きだ。

その昔、たまたま買ったショパンノクターン集がサンソン・フランソワの演奏であった。

何気なくかけたフランソワのノクターンの1番を聴いていると、不意に琥珀色の蒸留酒が香った。酒に詳しくないので、酒の種類までは特定できなかったが、瞬間的に確信した。

「このピアニストは絶対毎晩酒を飲んでいるに違いない」。

その後、フランソワが晩年はアルコール依存症を噂されるようなピアニストであったことを知った。

映像や色彩が鮮やかに浮かぶ名演は、何度か体験したことがある。
しかし、あれほど鮮やかに香りの立ち昇った演奏は、私はいまだこのフランソワのノクターン1番しか経験していない。

あの演奏は天才と酒のなせる業なのだろうか。

ショパン:夜想曲集&24の前奏曲

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