最後の春

大叔父が亡くなったのはいつだったと聞いたか、記憶は定かではない。
多分、初夏のころではなかったか。

大叔父が亡くなり、遺品の整理にかかった家族は、冬物の衣服が一切ないことに気がつき愕然としたという。

大叔父は、次の冬まで生きていることはないと確信していたということだ。

見事だ、と思う。

ここまで徹底した身辺整理を行えるほど、死期を確信できるものなのだろうかと思うけれども、死に際はかくありたいもの。

大叔父の目に映る最後の春、最後の桜は特別に美しかっただろうか。