山一證券OB座談会2006

2006年に行われた山一證券(1997年破綻)元社員6名の座談会が興味深かった。印象に残った点をいくつか挙げてみる。(以下、引用出典「会社葬送—山一證券 最後の株主総会」)

K「つくづく思うのは、やっぱり情で動く組織・会社でしたね。組織対組織というルール、ロジックに基づいて動いてなかった」

これは「組織人として失格な人たちばかりの会社でした」と言っているのと同義である。

具体的には、証券投資であるにもかかわらず顧客企業に「利回り○%は僕が保証します!」「僕を信じてください!」などといって契約を獲得して、損失が出てしまったので「損失補填をしなければ」と「頑張った」ことを指しているのだろうか。

「にぎり(利回り保証)」は最初、担当者レベルで行なわれたようだ。
本来、証券投資に利回り保証など出来ようはずもないことだ。それを「保証します!」と言ってしまったのであれば、「僕」という個人では出来ないことを出来ると断言しているという意味で、むしろ詐欺的、少なくとも無責任極まりない仕事ぶりだ。そうした不適切な営業に対し、山一はどう対処したか。容認した上、生じてしまった損失を「(営業担当が)言ってしまったのだから仕方ないな」と飛ばしたり、無理矢理な損失補填をしたわけだ。当初、担当者レベルだった「にぎり」を、禁止するどころか、会社公認で(ライン部長の了承の下)行なうようになっていったようだ。申し訳ないが、会社としてこの時点で終わってる。

T 「もともとどうして飛ばしをやったかといえば、山一の懐を肥やすためじゃない。大切な法人のお客様の損を抱え込んだわけだからね」

おい。
証券投資がなんたるかの超基本原則を踏まえたら絶対にできない、やってはいけない「にぎり(利回り保証)」をしたから山一は「飛ばし」をせざるをえないハメに陥り破綻した。
破綻の原因をまったく反省してない。
それどころか、「証券業界の風上にも置けない」「盗人猛々しいとはまさにこのこと」と言いたいレベルの認識を臆面もなく披露している。なんとこれが山一證券の元経理部長の発言なのである。
かなり唖然とするのだが、えてして引き起こした不祥事を起こした当事者あるいは当該組織所属者はこうした驚愕の認識を持っていることがよくある。

O 「山一出身者はなぜか優秀だという過大評価をされてますよね(笑)。僕は神話だと思ってますけど」

神話もいいところなのではないか。
勿論、個々人、一人ひとりをみれば優秀な人もいるだろう。だが、破綻企業の破綻原因をふまえ、仕事に対してトンデモな認識を持っていないか確認しないとちょっと危ない。と考えた方が妥当だろう。

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