オリンパス問題に対する疑問と見解

オリンパス問題の経緯を確認する。
2011年10月14日 ウッドフォード社長(2011年4月社長就任)、解任される
2011年11月8日 オリンパス、1000億円を超える「飛ばし(簿外債務)」(ジャイラス社買収における報酬、アルティス・NEWS CHEF・ヒューマラボの買収および減損処理による)を公表

発端はウッドフォード社長が月刊「FACTA」8月号のオリンパスの疑惑を報じた記事の真偽を菊川会長らに問いただしたところ社長を解任される騒ぎだった。現在も迷走中のオリンパス、いまだに疑問だらけである。

<疑問1>
なぜオリンパスは2001年3月期の時価会計導入時に損失処理をしなかったのか?

「飛ばし」は不適切な処理であり、多くの場合、違法行為なのは間違いないのだが、実際にはかつて多くの企業が「飛ばし」を行なっていた。
そして、ほとんどの企業は2001年の時価会計導入時に損失計上をして「飛ばし」を処理したはずなのだ。
オリンパスが2001年以後も飛ばしを続けた理由が分からない。
損失処理できなかった理由は何なのだろう。ただのバブル崩壊、株価暴落による損失ではない、なにか公に出来ない、非常に後ろ暗い理由のある損失だったのだろうか。という憶測が拭い去れない。

<疑問2>
なぜ監査法人は、1000億円を超える「飛ばし」(簿外債務)がある粉飾決算に「無限定適正意見」を出したのか?

本当に監査法人は簿外債務が見抜けなかったのだろうか。もし見抜けなかったとしたら、具体的な監査を欺く方策として、オリンパスがどのようなことをなしたが故に見抜けなかったのか。

個人的には監査法人が見抜けなかったとは思えない。飛ばしに加担していたのではないかと強く疑っている。
疑いを払拭したいなら、監査法人は、具体的になぜ見抜けなかったのか、その理由を公表すべきだ。
具体的とは、例えば、
・ ○○(金融機関かオリンパス経理部か)の作成した○○という書類が偽造であったため。
・監査業務において本来確認すべき○○という資料の確認を・・・・という事情により省略したため。
といったことだ。
具体で公表されなければ、監査の改善されるべきポイントが分からないので再発防止になりえない。
オリンパス監査法人は、2009年7月以降は新日本有限責任監査法人、それ以前は有限責任あずさ監査法人である。

2001年の時価会計導入時の監査法人はあずさだ。
あずさは監査法人公認会計士としての責務を果たしたのだろうか。
監査法人の責任は問われなければならない。株主は監査法人に対しても損害賠償請求をすべきところだろう。

<疑問3>
オリンパス社内において、何人の社員がこの不正を知っていたのか?

飛ばしの全体図を知らないことが「知らない」ことにはならない。
「確実に違法、または不適正な処理が行なわれている」と確信していた社員は案外多いのではないか。これだけ大規模で長期にわたる飛ばしである。しかも社長以下、会社ぐるみだ。個人レベルの横領、不正ではない。ヒラ社員であっても立場によっては不適切な処理の一端をよく知る者もいただろう。シチリア・マフィアと違い、オメルタの掟があるわけではなかろう。同期や社内サークル等のつながりもあるはずだ。そうした人間関係の中で「ここだけの話」がなかったとは考えられない。不正が存在することは数百人規模の社員が知っていたのではないか。
にもかかわらず、2011年まで世間にばれなかったのはなぜか。オリンパスという会社は何か特殊な文化や制度を持っているのだろうか。

<疑問4>
なぜ上場維持がありうるという見解が出てきたのか?
20年以上にわたり、現在公表されているだけでも1000億円を超える簿外債務を飛ばしてきた企業が上場維持可能なら、東証上場廃止基準は何なのだろうか。

上場廃止基準
有価証券報告書等に「虚偽記載」を行った場合で、その影響が重大であると当取引所が認めたとき
http://www.tse.or.jp/rules/listing/stdelisting.html

上記に20年以上、経営陣主導による1000億円を超える虚偽記載が該当しないのなら、一体何が該当するのだろうか。

これで上場維持とするなら、社会にこういうメッセージを発信することになる。
「飛ばし、粉飾、会社として全然OK。ばれても何人か生贄に差し出せばいいだけだし。例え起訴されて有罪になっても数年で出てこられるし、いいじゃん。会社としてはテキトーに委員会を設立したり組織をいじってそれらしいポストを新設すればOKだし。ポーズとっときゃいいんだよ、ポーズ。役員報酬50%に削減とか言っても、元々年収は1億円以上または1億円に近いし。上場維持できるし。飛ばし、粉飾、まったく問題なし!」

東証は、なぜ巨額の簿外債務があるかもしれない企業に投資家が投資できると思えるのか。正常な判断能力を持った投資家なら「上場基準が信用できない東証からは撤退せざるをえない」と判断するのではないか。

「簿外債務により上場廃止となれば(簿外債務を知らなかった善良な)株主が損害を被ってしまう」との意見があるが、株主は、当該企業および監査法人に損害賠償請求をすべき話だ。
それより市場そのものの信用が失われる方が大問題だ。

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2011年11月19日「オリンパスがどうかしている」
2013年5月5日「終身雇用の弊害、労働市場がないということ」