それはパチンコ店の問題ではなく@長崎

長崎といえば日本で有数の観光地だと思っていた。数年前、かの地を訪れるまでは。
出島や隠れキリシタン、原爆という特殊な歴史。それゆえに残る長崎にしかない建築物や物語の数々。
広告宣伝の面でも優位に立つ。プッチーニの「蝶々夫人」はなにしろ傑作オペラなので今後も世界中で上演され続けるだろう。長崎が一銭も出さずとも今日も明日も世界で「ナガサキ」が宣伝され続ける。


さて長崎の観光スポットとして「稲佐山からの夜景」がある。曰く1000万ドルの夜景だそうである。
長崎は、湾の周りの斜面にびっしりと住宅が立ち並んで街が形成されている。その斜面の明かりが函館とも神戸とも違う立体感のある夜景をつくっている。
が、稲荷山に登ってまず目に付くのはパチンコ店の強烈なネオン。夜景、台無し。

しかしそれはパチンコ店のせいではなかろう。パチンコ店にしてみれば、いつもの店舗の作り方をしたに過ぎない。実際、歌舞伎町や大阪ミナミなどであれば、ギラギラにネオンを輝かせて問題はない。というより、それでこそ街に溶け込む。

もし観光客の期待を裏切らない夜景というのも重要な観光資源だという認識を長崎市全体で共有するのなら、市がネオン等の規制を条例で行なうべきだろう。
もし「観光」を自治体が力を入れる産業に挙げているのならば、まずは観光に適した街を作るための条例を整備しないと。

長崎市都市景観条例は1989年1月1日施行。

http://www1.city.nagasaki.nagasaki.jp/reiki/reiki_honbun/q3020586001.html

(市民及び事業者の責務)
第4条 市民及び事業者は、自らがまちづくりの主体であることを認識し、地域の特性に配慮した都市景観の形成に努めるとともに、市が実施する都市景観の形成に関する施策に協力するものとする。

この第4条をくだんのパチンコ店は知っているだろうか。また、周囲の長崎市民にもどれだけ知られているのだろうか。

(啓発)
第5条 市長は、市民および事業者が都市景観の形成に寄与することができるよう、都市景観に関する意識の高揚と知識の普及を図らなければならない。

具体的な啓発状況が知りたいところだ。

(行為の届出)
第13条 景観形成地区等において、次の各号に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、市長に届け出なければならない。
(1) 建築物等の新築、増築、改築、移転、除却、大規模な修繕もしくは模様替え又は外観の色彩の変更

くだんのパチンコ店の所在地は、きっと景観形成地区等に入らないのだろう。
夜景の形成を目的とした地区の指定もぜひ。その上で

(助言及び指導)
第14条 市長は、前条第1項の規定による届出があつた場合において、当該届出に係る行為が当該地区の景観形成基準に適合しないと認めるときは、当該届出をした者に対し、必要な措置を講ずるよう助言し、又は指導するものとする。

市長からの助言と指導を。

条例は効果的に実行されないと。
長崎、残念ながら観光地としての本気度が見えなかった。これだけの観光資源を持つ街は滅多にないのに。

がんばれ、長崎。