創業1889年、明治堂

北区王子の「明治堂」は、東京で最も美味しいパン屋さんの1つだ、と私は思う。

ここの魅力は「疲れない美味しさ」だ。
なんとなく、お店の人がパンをつくることをがとても好きで楽しんでいるような気がする。

色々な種類のパンが売っているが、その中でも特に、ふわふわで、しっとりした食パンが最高に美味しい。
これぞ日本の風土にあった食パンというやつではないかな、と思う。


創業明治二十二年
明治堂
エッフェル塔と同い年

しかし、当たり前だが明治の1889年の創業時にこんな美味しいパンを作れたとは思えない。
ついでに、昭和の時代にこんな美味しいパンを作れたとも思えない。

「明治堂」という店名をみるたびに、浮かぶ疑問がある。

「いつから今のような美味しいパンを?」

例えば代替わりなど、どこかの時点で劇的な進化があったのか。
それとも徐々に進化してきたのか。

基本、「進化する老舗」しか生き残れないのだろうな、と思う。
でも、今の明治堂の食パンはこれで一つの完成形なのでは?とも思う。

明治からの老舗の味は、どこから来て、どこへ行くのか…。

老舗の近所に住み続けている老人なら、その味の変遷の記憶もふと脳裏に浮かぶのかもしれない。
そんな記憶の集積も老舗の味かもしれない。

ところで、昔のレシピなんぞを保存しているマメな老舗ってあるのだろうか。
あれば「懐かしの味フェア」「幻の味、これが明治のパンだ」とかおもしろい企画もできそうだけれど。