糸魚川大火、手厚い被災者対応

2016年12月、酒田の大火以来、40年ぶりの大火が糸魚川で発生した。

【発生日時】2016年12月22日(木曜日)10時20分頃
【焼損棟数】147棟(全焼 120棟 半焼 5棟 部分焼 22棟)
【被災者状況】145世帯260人 55事業所

ある日突然、自分の住まいや思い出の品々が灰塵と化してしまうというのは、とてもショックなことだ。被災された方には心よりお見舞い申し上げる。

しかし、この大火、過去にないレベルで被災者対応は手厚かった。今はやはり豊かな社会なのだな、と思う。
糸魚川大火の被災者対応をふりかえってみる。

1.大火で初めて被災者生活再建支援法が適用される。
被災者生活再建支援法が1998年に成立してから初の大火である。
前から「被災者生活再建支援法って、“自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者”が対象なんだよな。もし大火が発生したら対象外なのだろうか?それ、絶対、納得できないな」と思っていた。

さて、適用されるのか。

糸魚川市に被災者生活再建支援法を適用します

2016年12月30日

 平成28年12月22日に発生した強風により、多数の住宅被害が生じたため、被災者生活再建支援法(平成10年法律第66号)を適用しますのでお知らせします。
 また、被災者生活再建支援法適用を踏まえ、県の被災者生活再建支援制度を実施します。

(出典:新潟県 報道発表)
http://www.pref.niigata.lg.jp/bosaikikaku/1356858987928.html

間髪いれず適用。

なるほど。風害か。確かに「強風なくして大火なし」。

2.充分な空家あり。仮設住宅建設不要
糸魚川市は2016年12月27日現在で、「提供可能な空家住宅」が、228戸あるとしている。

内訳をみてみよう。

公営住宅(県営・市営)49戸
応急借り上げ住宅(民間アパート)166戸
その他個人・企業提供住宅13戸
合計228戸


被災世帯数は145世帯だから、充分足りる。仮設住宅、建設不要。

で、このみなし仮設住宅の入居条件である。

家賃、敷金、礼金不要。原則、2017年3月末日まで。ただし、入居者の生活再建状況により、契約日から2年を超えない範囲で延長可能。

うむ。
自分があまり蓄えのない高齢者や借家人だったなら、基本、可能な限り、つまり、2年間延長するんじゃないだろうか。

3月末日時点でのみなし仮設住宅の利用状況、大火から1年後の利用状況、2年後の利用状況がぜひ知りたい。

しかし、この制度があるからこそ、復興計画に時間をかけることができる。実際、復興計画の策定は、大火翌年の8月までかかっている。

3.がれきの撤去費用は市が負担

通常、火災のあとのがれき撤去は所有者負担だ。しかし、糸魚川大火では、がれきの撤去費用は市が全額負担することになった。

義援金ふるさと納税の使い道は、第一に「がれきの撤去費用」だろう。と思っていたので、これは納得である。

4.市が土地の買い取り
被災地区は、いわゆる既存不適格の建物が多かった。セットバックの必要や接道義務などを考慮すると「建て替え不能」の住宅もあっただろう。

で、大火である。再建を希望しない被災者から市が土地を買い取って敷地の調整に充てるという。
確かにそれが合理的でもっとも適切な対応だと思う。

住まいが焼失してしまったのはショックだが、一方で、「これで売れない土地とボロ家をどうしたらいいんだという問題が解決した」というケースもあるだろう。

もしかしたら、全焼した家の中には「どうしたものかと持て余している空家」もあったかもしれない。ただ、被災地域の空家は10軒のようだ。意外に少ない。

5.義援金は5億4000万円
糸魚川市が受付けた義援金 541,701,108 円(2017年7月 14 日現在)
義援金は、被災者に分配される。
分配例)全壊および大規模半壊で、再建または再取得する場合、300万円

★★★

火災の場合、適切に火災保険の契約をしていれば、火災保険金ががっつり支払われる。
火災保険に入っていれば、火災後、再建したり購入したりした住宅のレベル(ひいては生活レベル)は、むしろ数段、向上するはずだ。それはそれで、個人にとっても地域にとっても望ましいことだ。

ただ、今回の被災地域では、火災保険無保険の家も多かったようだ。
大火の可能性も考えると、自治体は、火災保険の加入をもっと推進すべきだと思う。交通災害共済だの交通傷害保険だのを扱っている場合ではない。

なお、火災保険は、火災や台風、土砂崩れなどはがっつり補償してくれるが、地震津波、噴火の場合は地震保険の補償範囲となり、充分な補償がない。

それを踏まえて、「自然災害」でも、地震津波、噴火の場合と、そうでない場合の被災者対応は、差があって然るべきだと思うのだが、どうだろう。

【参考】
2017年3月3日「糸魚川市、復興計画作成へ検討委発足 「修復型」でまちづくりへ」日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO13596520S7A300C1L21000/

糸魚川市駅北大火に係る糸魚川市災害義援金の第4次配分計画
http://www.city.itoigawa.lg.jp/secure/20095/haibunkeikaku4.pdf

糸魚川市被災者説明会資料一覧
http://www.city.itoigawa.lg.jp/6801.htm

平成29 年2月19 日(日)「糸魚川市駅北大火被災者説明会 」
http://www.city.itoigawa.lg.jp/secure/20223/setumeikai3.pdf

平成28 年12月28 日(日)「糸魚川市駅北大火被災者説明会 」
http://www.city.itoigawa.lg.jp/secure/20223/setumeikai1.pdf