食べログで「完全禁煙」を検索してみたら

とある若手料理人と、こんな会話をした。

「あのお店(有名店)は感動しました。名店ですよね」
「うーん、でも、あそこの店主、タバコ吸うんですよね」
「え、店内は完全禁煙ですよね」
「ですけど休憩時間とかに吸ってるみたいで。店主がタバコ臭い時があるんですよ」(←すごく嫌そうな顔)

「才能に恵まれた優れた料理人だが喫煙者」という人も確かにいる。ただし、私の知る限り、みな高齢だ。これは1970年あたりで80%、1980年あたりで70%の成人男性が喫煙していた頃の名残だろう。

普通に考えて、喫煙は嗅覚にも味覚にも影響するから料理人としてNGに決まっている。
そして接客業としてタバコ臭いのもNGだ。

若手料理人としては、料理人で接客業なのに喫煙するなんて、「ないわー」、「あの人は(料理人として)同志じゃないから」と思ってしまうのだろう。

私自身も「美味しい料理を追及するのに喫煙可なんてありえないし。基本、完全禁煙かどうかは、美味しいレストランかどうかのメルクマールとなる」と考えている。

で、食べログで「完全禁煙」でレストランを検索してみた結果が思いのほか面白かった。

食べログー東京ー完全禁煙
http://tabelog.com/tokyo/rstLst/cond13-00-00/

東京の全レストラン(ただしテイクアウト専門店含む)のうち「完全禁煙」の登録がある店は15%に過ぎない。

食べログの登録は全く正確ではない。実際はしっかり完全禁煙店なのに登録がもれている店も沢山ある。

まず、この「完全禁煙」の登録状況について参考になるのは「自然食・薬膳」だろう。

「身体にいい」を売りにしてるのに「喫煙可」はありえない。しかし「自然食・薬膳」で完全禁煙の登録がある店は52%。あとの48%についての可能性は3つだ。

可能性1)実際は完全禁煙なのにその登録が漏れている。
可能性2)実は自然食でも薬膳でもなく、カテゴリ登録が間違っている。
可能性3)「自然食」または「薬膳」にも関わらず「喫煙可」である。

3はまさかないだろう。
「身体にいい」をコンセプトに掲げて「喫煙可」なんて店があったら「完全に頭がおかしい」。
私は基本的には「自然食」なんて言うのは胡散臭いと思っているし「薬膳に美味い物なし」と思っているので48%のレストランについて実地検分はしない。

とりあえず「完全禁煙の店は、大体、半分くらい登録が漏れているだろう」と推測するにとどめる。

さて。
上記を除いて完全禁煙登録率が目立って高いカテゴリはどこか。
フレンチとラーメンである。完全禁煙登録率、フレンチ44%、ラーメン33%。

私は「今、日本の料理界で、最も活気があって、優れた料理人が集まっている業界はフレンチとラーメン」と確信しているのだが、食べログの完全禁煙登録率の高さはそれを裏付けていると思う。

美味しさを追求したら「喫煙可」はない。
基本的に、完全禁煙率の高さは、そのカテゴリのクオリティの高さを表していると思う。
また、客も「全面禁煙」が重要な情報だと思うから食べログデータに掲載しているわけで「今、日本の食通はフレンチとラーメンの分野に集中している」といえるだろう。

ところで。
「その料理の特性から、禁煙以外、ありえなくね?」という分野がある。
まず蕎麦だ。
蕎麦は香りが命だ。しかもその香りは相当に繊細だ。蕎麦屋にもかかわらず喫煙可なんてありえない。喫煙を許す蕎麦屋など、確実に「駄蕎麦屋」と断言できる。
蕎麦屋の完全禁煙率は17%。
登録率が半分程度とみても「蕎麦屋過半数は駄蕎麦屋である」ということになろうか。
まぁそうかもしれないが。でも、蕎麦屋はもっと「蕎麦の美味しさ」を追求してもよいのではないか。

他に、寿司も日本料理も、繊細な香りが命だったりする料理なので「喫煙可なんて本当にありえない」。

しかし、私の経験では日本料理店はかなり「地雷」可能性が高い。完全禁煙と登録されている店が10%、登録もれを考慮しても20%そこそこというのは肌感覚と合致する。

多分、「ラーメンはB級グルメ。自分たちの方が格上」という意識がある蕎麦屋や寿司屋や日本料理店は結構あるだろう。
でも、「ラーメン店の完全禁煙(と食べログに登録されている)率は33%」という事実の持つ意味を、日本料理店はよくよく考えた方がいいと思う。<関連記事>
2015年2月10日「全店舗休日禁煙のレストラン 東京編」
http://d.hatena.ne.jp/falken1880/20150210