若者ベアなし。春闘2014

今年の春闘は、なぜか政府がベアを口にするなど異例だった。個人的には例えベア(ベースアップ)とか言われても、もはや春闘に白々しさしか感じない。

労働組合による春闘なるものを白々しく感じる理由。

労働組合の組織率は18%をきっている(労組なんて関係ない労働者がほとんど)。
・労組組合員のほとんどは大手企業正社員(労働組合の組合員とはつまり既得権益中高年のこと)

そして労組組合員(大手企業社員)の働く今日的職場の風景はこんな感じではないか。

・例1)大手企業社員(労組組合員)1人・子会社社員10人(注:子会社社員は労組組合員の可能性はある))・協力会社社員15名・派遣社員5人

とか、

・例2)大手企業社員(管理職と労組組合員)2人・派遣社員30人

とか。

ちなみにマルハニチロ事件の舞台となったあくりふーず群馬工場は、正社員66人(22%)、契約社員181人(66%)、パート8人(3%)、派遣23人(9%)だった。

昔のように、

・本体企業社員(管理職または労組組合員)60人。以上。(子会社社員も派遣社員契約社員もいない)。
なんて職場は滅多にないのではないか。

連合傘下の労働組合員の皆様に職場環境を聞いてみたい。

実際、とある伝統的大手企業の社員からこんな話を聞く。
「うちの職場、40歳以下なんていないんだよねー。若いのはみんな派遣だし(当然、労働組合とは無関係)」

春闘ストライキ権を担保に行われているわけだが、「この職場にはほとんど労組組合員なんていないんですけどぉ」という職場でストライキって微妙…。労組組合の皆様はこうした状況に違和感とか疑問とか持たないのだろうか。

★★★

日本で働くサラリーマンなら誰でも知っているカースト制度がある。
・大手上場企業・公務員>子会社・グループ会社社員>下請け会社・協力会社
・正社員>>>契約・派遣・パート(いわゆる非正規労働者

とある大手企業社員の言葉を紹介しよう。

「俺は絶対、親会社って呼ばれる会社(大企業)への就職にこだわったね。グループ企業とか子会社の社員だと例え机を並べて同じプロジェクトに携わっても(しかもそのプロジェクトメンバーの中で子会社社員が最も優秀で実質上仕事をまわしていて、親会社社員はちょっとパープーだとしても)、年収は100万円くらい余裕で低いし、ここぞという時の権限がなくて悔しいし」

若者の大企業志向?小さな会社に行きたがらない?当たり前だ。こういう現実を学生だって知っているのではないか。

労働組合が掲げるべき正義は「同一労働・同一賃金」である。と私は思う。
今日、労働組合には正義がない。

連合は相変わらず年齢ごとの賃金モデルなんて提示しているがナンセンスだ。年齢と仕事のパフォーマンスはリンクしない。


同一労働・同一賃金を実現するために必要な施策は次の二つだ。

1.(正社員の)解雇規制緩和
2.年功賃金の廃止(注)

(注)ただし勤続年数に応じた昇給という要素はある程度あるべきだと思う。5年だか10年だかを限度で充分だと思うが。勤続年数昇給は職場ルールを含む仕事の習熟という意味でも合理的だ。労働者の職場定着のインセンティブになる。通常、新人教育は企業にとって大きな負担だ。


これらを連合が提言しているところみたことがない。
春闘などあまりの白々しさに冷笑しか浮かばない。既得権益者集団たる労働組合が社会の共感など得られようはずもない。


しかしここ数年、春闘の想定を超えるぶっとびぶりは凄い。
今年のぶっとびはなんといってもNTTだ。

週刊ダイヤモンド「NTTが7年ぶりにベア実施 それでも上がる不満の“理由”」
http://diamond.jp/articles/-/50524
記事を要約してみる。

・平均月額1600円という7年ぶりのベースアップ。
・今回の賃金改定により、主要8社だけでコストアップは年間20億円程度。
・昇級は「エキスパート職」と呼ばれる主査や係長など、社員全体の54%にあたる現場のリーダー層に限られる。つまりベースアップするのは、NTT東日本や西日本の50代以降の現場社員。
・NTTドコモなどは、ベースアップの対象となるエキスパート層は少ない。ていうか20代、30代の多くはベースアップなし。

いやはや。
NTTドコモ(若手社員集中。NTTグループの稼ぎ頭)はベースアップなし。
NTT東西(中高年社員集中。負債ばかりが目につく。フレッツ光って売れるのか超疑問)はベースアップ。

常人の理解を軽く超える。

NTTドコモの若い社員(労働組合組合員)の皆様は「僕たちベースアップしてませんから」って気が付いているのだろうか。気が付いていたら反乱が起こると思うのだが。

2014年の春闘を総括する。

・若者の多くは派遣社員などいわゆる非正規社員労働組合員ではないため春闘は関係ない。
・若者は例え既得権満載の大企業正社員の職をゲットできて労働組合員になったとしてもベア対象外。

若者、アウト。

<関連記事>
2013年3月23日「春闘が白々しい理由」
65歳までの社員雇用義務というのも正気を疑った。
別に私は春闘に驚愕なんて求めてないのだけれど、なんでこんな毎年のようにつっこみどころ満載なんだろう。