放射線とタバコ

「医療統計わかりません!」の著者のブログ記事が大変おもしろかったので本人の許可を得て転載する。

最悪の事態 2011年03月15日

「煽っている」ようにしか見えないけれど、報道の正義や「ききかんり」としては「起こりうる最悪の事態を考慮して、しっかりと分かり易く情報を伝えている」のだろう。なので、私も最悪の事態を考慮してみた。都合により、固有名詞を一部伏せた。

 ○○(会社名)も認めていたとおり、現状では●●の人体への影響はきわめて深刻な状況である。
東京大学の専門家および国立がん研究センターの統計データによれば、●●を30分に1回、数分ずつ浴び続けることで、数百種類もの発がん性物質を体内に取り込むことになる。ほとんど全てのがんに「かかりやすく」なる状態が生じ、その可能性は50%上昇。一部のがんについては540%の上昇が見込まれる。また自身の被曝がなくても、●●を浴びた人の近くにいる場合、やはりがんにかかりやすくなるという。
 一部省庁や国連の関連機関もその危険性を重視しており、●●への曝露を防ぐべく、可能な限りの努力を継続中である。だが●●の中毒性もあって効果は不十分で、予断を許さない状況にある。

 …慌てないでいただきたい。お気づきの方もあると思うが、○○はJT, ●●はたばこである。なお、数値はすべて正しい。要するに「1日1箱たばこを吸い続けると、非喫煙者と比べてがんにかかる可能性は全がんで1.5倍・肺がんで6.4倍になる」ということである。

 100ミリシーベルトで「健康被害」「がんにかかりやすくなる」と報じられたが、「どの程度罹りやすくなる」の情報が抜けていたし、私も見落としていた。被爆者調査の資料を見てみると、1グレイ(今回のガンマ線であれば、1シーベルト=1000ミリシーベルト=100万マイクロシーベルト)の放射線を浴びたとき、白血病のリスクは5倍程度、それ以外のがんのリスクは1.5倍に増える。
 なお生涯を通して白血病にかかる確率は、男性では125人に1人、女性では170人に1人。炉の近くに数時間いて「初めて」、この確率が男性だと25人に1人、女性だと34人に1人に増大するのが、「放射線の危険性」になる。「1時間いたら必ず白血病になる」わけでは決してない。

 今日一日、断続的にチェックしていたけれど、東京と福島の中間にある茨城での放射線量は最大でも1時間あたり4マイクロシーベルト程度。屋外で10-15時間浴び続けて、ようやくレントゲン1回分になる量だ。東京での数値は、多めに見積もっても「危険水域」の1000分の1の値。
 
 危険を伝えるのは大事。だが、「現状のデータで、どんな人が危険で、どんな人が安全なのか」「危険とはどの程度の『危なさ』か」を一緒に伝えなければ、単なる煽りになってしまう。不確定要素が大きいけれど、少なくとも現状分かることは以上の通り。

タバコのリスクの高さに驚くばかり。

「医療統計」わかりません!!

「医療統計」わかりません!!