観光地としての豊洲市場

2018年10月11日、豊洲市場がついに開場した。

築地に比べて、食材、しかも生モノを扱う場所として適正な施設であることは間違いない。

でも、観光地としての豊洲はどうだろう。

築地は、観光地としてとても魅力的だった。
築地の一番の魅力は「猥雑さ」だったと私は思っている。しかし、「猥雑さ」と「合理的で衛生的な市場環境」は両立しない。

果たして観光客として豊洲を楽しめるのか。

観光地としての豊洲市場を訪れてみた。

まず、「水産卸売場棟」である。
まぐろなどの「せり」がデッキからガラス越しに見学できる。築地に比べ、臨場感で劣るわけだが、築地のせり場と観光客の近さが異常だっただけで、ガラス越しの見学は衛生の観点からは適正だ。

「せり」は午前6時ごろ開催されるわけで、正直、「せり」を見学に行く人、行くことができる人は非常に限定的だろう。
個人的には、せり見学は今までもこれからも「行かないだろう」と思う。

 

それより、デカいマグロの模型展示だけが目立つ「見学者ホール」の観光地としてのイケてなさは相当だ。パネルもショボいし。

リノリウムの床もそっけなさといい、この棟の「ここは基本、事務・作業棟なんで」とという強い主張を感じる。

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次に「水産仲卸売場棟」だ。
1階の仲卸売場に、観光客は入ることができない。これには納得と困惑が入り混じる。
築地観光の魅力は、魚売り場をみて歩けるところだった。生きのいい魚や見たことのない魚。そして季節の魚介類。あれほど見ごたえのある「観光地」は滅多になかった。

ただ、あの狭い売り場で冷やかしの客(観光客)は明らかに邪魔だった。
また、売買に関係しない人を魚売り場に近づけない方が衛生的でもあろう。
その意味で、観光客、立ち入り禁止は納得ではある。

しかし。つまらん。

あと、「たまに自転車や徒歩で買い出しをしていた個人経営の飲食店料理人」や「年に何度か築地で買って調理するのが趣味の個人」もいたわけだが、彼らも観光客同様、しめだされることになるのだろうか。
「個人や仕入れの小さな飲食店は近所の魚屋で買うべき」という整理は理屈では「あり」だと思うが、なんとなく残念だ。


ただ、築地の旨くて魅力的な飲食店の数々は豊洲でも健在だ。

アジフライやチャーシューエッグが絶品の「八千代」。甘味なら「茂助だんご」。
「やじ満」「トミーナ」「小田保」「鳥藤」など、他にも美味しそうな店は沢山あるのだが、豊洲に行ったらこの2つの店は外せないので、なかなか開拓がすすまない。
ちなみに鮨屋は大行列なので個人的にはパスである。昔、混んでない鮨屋にぱっと入ったことがあるが、まったく美味しくなかったし。豊洲の鮨屋がすべて美味しいわけではない。

豊洲に移転した飲食店は39店舗。
純粋に市場関係者だけで39店舗の経営が成り立つのか。多分過剰だろう。
築地では、これらの飲食店を支えてきた常連には、さりげに近所の勤め人も多かったのではないかと思う。豊洲では、築地ほど「近所で働く勤め人。特に不規則勤務の勤め人」の常連は期待できない。
豊洲市場の飲食店としては、豊洲が観光地として観光客をひきつけることは死活問題だろう。

まだ豊洲市場は開場したばかりである。これから観光地としてどんな魅力を付加していくのだろうか。

 

【関連エントリ】
2018年10月29日「築地から豊洲へ」
https://falken1880.hatenablog.com/entry/2018/10/29/215756